− 第592回 −  筆者 中村 達


『とっとり横断ロングトレイル』

 鳥取県で県内を東西に横断するロングトレイルが設定された。それを記念に「とっとり横断ロングトレイルフォーラム」が行われ、県民や関係者が集まった。  県内で山陰海岸ジオパークトレイルや中国自然歩道が整備されていて、それに新たに設定された「伯耆の国トレイル」がつながることになる。兵庫県県境から鳥取砂丘を通り、三朝温泉、倉吉、大山、米子そして境港に至る、県内の観光地や名所をルートにしたロングトレイルだ。私の知る限り、都道府県で域内を横断、もしくは縦断するように設定されたロングトレイルは少ないと思う。

 鳥取県は人口が最も少ない県で、56万人ほどしかでない。しかも減少し続けているといわれている。少子高齢化で「健康づくり」が県のテーゼともいえる。それに若者たちを意識したインバウンドが加わる。だからこそ鳥取県は、ことトレイルに関しては、全国でもトップレベルの取り組みをおこなっている。

 例えば、2016年には「World Trails Conference in Tottori, JAPAN」が開催された。これは世界のロングトレイル関係者の交流と最先端情報の集積が目的で、国内では初めての開催だった。ヨーロッパ各国、米国、中南米諸国、オセアニア、アジア、アフリカなどからおよそ200名が参集した。南アフリカ、パナマ、トルコ、香港などからもトレイルについての発表があった。(https://www.pref.tottori.lg.jp/secure/1053553/6thWTC_report.pdf
 このWTC には延べで4500人が全国から参加した。私も参加させていただいたが、これほどの規模のトレイルの国際会議は国内では初めての開催だろう。
 失礼ながら、当初はなぜ鳥取県?と不思議に思ったが、参加してその先進性に驚かざるを得なかった。ただ惜しむらくは、WTC in Tottoriが開催されたことが、さほど知られていないことだろう。このWTCはもっと評価されるべきだと思う。
 そして、今回の「とっとり横断ロングトレイル」の設定である。
 WTCの開催から2年半で、状況は大きく変化しようとしている。各地でロングトレイルの整備が進み、地域の活性化だけでなくインバウンドを目的にするところが増えてきた。また、子どもたちの教育的視点を重視したトレイルが出てきた。
 そんな中で、鳥取県の「ロングトレイルの先駆け県」ともいえる取り組みに注目したいと思う。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員