− 第588回 −  筆者 中村 達


『第6回ロングトレイルシンポジウム』

 2月23日に第6回ロングトレイルシンポジウムが、安藤百福センターで開催された。早いもので6回目の開催となり、参加者の雰囲気で「歩く山旅」が少しずつ広がっているように感じた。参加者も140名あまりとなり、予定していた座席はすべて埋まってしまった。

 今回のテーマは「トレイル文化を語る」で、日本の登山道を長年にわたって支えてきた山小屋の主人などに登壇していただいた。北アルプス穂高岳の涸沢ヒュッテ、双六小屋、そして八ヶ岳の黒百合ヒュッテの主人たち。登山道つまりトレイルを維持し、管理する苦労話やリアルなエピソードに参加者は聞き入っていた。

 最大で100キロもの荷物を、かつては「雨が降ろうが鑓が降ろうが」担ぎ上げるのが、日々の仕事だった。いまは、ヘリで荷揚げを行うが、それでも人力で担ぎ上げることが多いそうだ。荷揚げするためには、トレイルが整備されていなければならない。そして、よく整備された歩きやすいトレイルの先には、いい山小屋がある。
 登山道の整備と維持管理は山小屋にとっても生命線だが、道づくりは山小屋主人のライフワークであり、楽しみでもあるように思った。

 また、ニュージーランドの北島と南島を貫くロングトレイル「テ・アラロア~ニュージーランド ロングトレイルの旅~」と題した、女性山岳ガイドの講演は自然・旅・衣食住そして、当地の文化と歴史を考えるためのコンテンツが数多くあり、個人的にも大変参考になった。聴いていてかつて「サザントラバース」に同行取材した情景が蘇ってきて楽しかった。
 そのほか各地のトレイルの報告などがあり、なかでもインバウンドへむけての取り組みが共通の課題のように感じた。手前味噌かもしれないが、内容の濃いシンポジウムだったように思う。

(次回へつづく)


■バックナンバー

■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員