− 第587回 −  筆者 中村 達


『外国人観光客』

 インバウンドで外国人観光客が大変多くなった。外国人観光客の増加で京都の市バスなどは、住民が乗れずに困っているとTVが報じていた。日本は少子高齢社会に突入しているので、国家としては観光立国が有力な経済施策となっている。ただ、急速に外国人が増えたので、インフラや受け入れ態勢、それに私たちの心構えも追いついていくのが大変だ。
 しかし、ここにきて新幹線の車内放送も、車掌が英語で停車駅で開くドアの左右まで案内をするようになった。英語表記の案内も少しずつだが増えているようだ。こうして徐々に国際的な観光が、日本にも定着していくのだろう。

 出張で京都から新幹線に乗り、東京経由で地方都市へでかける機会が多く、特に新幹線車中での外国人観光客の姿は、日常的に年中見られる風景になった。数年前ならまだ少しは珍しくもあったが、いまは全く違和感はない。そんなことを考えながら欧米人の姿を見ていると、真冬のさ中なのにTシャツとか半袖が多い。もちろんダウン姿も見るが、冬だからといって画一的ではない。これはヨーロッパや米国に出かけても同じだ。アジア人とは皮膚の角質が違うので寒さの感じ方が異なる、という説もあるが真偽のほどはわからない。

 東北のトレイルを視察にやってきた、スイスに本部のある団体の代表と、安藤百福センターで会うことになった。そこで、北陸新幹線の佐久平駅で待ち合わせをした。
2時間ほど前に招聘先の担当者から、間違いなく氏は予定の列車に乗りました、と電話があった。彼は東北新幹線の仙台から大宮で北陸新幹線に乗り換えて来るはずだった。  私も彼と同じ列車に乗るようにしたので、下車すると急いで改札口に向かい彼を待った。が、いつまで待っても出てこなかった。5分もすると、駅は閑散として待合室に数名が座っているだけになった。

 しばらくして、携帯電話にメッセージが入った。「間違えて一つ前の軽井沢に下りてしまった。次の列車で向かうので待っていてほしい」と。この日、大雪の予報が出て、標高の高い佐久平は、一段と冷え込んでいた。あまりに寒いので、待合室へ入った。
 1時間後、彼が乗った新幹線が到着した。パーカーのフードをスッポリ被り、会うなり「寒い!」と言った。外国人でも南アフリカに住んでいると、とてもTシャツ一枚とはいかないようだった。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員