− 第586回 −  筆者 中村 達


『トム・ソーヤースクール企画コンテスト表彰式のこと』

 先日、横浜のカップヌードルミュージアムで、第17回トム・ソーヤースクール企画コンテストの表彰式が行われた。今回、学校部門の文部科学大臣賞に、大阪府の「太子町立中学校社会科学部」が、優秀賞には島根県の「須佐コミュニティセンター」が選ばれた。また、一般部門の安藤百福賞には、東京都の「社会福祉法人扶助者聖母会星美ホーム」が、そして、優秀賞には新潟県の「寺子屋つばさ100km徒歩の旅実行委員会」が選考された。

 表彰の後、入賞団体から実施内容の報告が行われた。学校団体からは自然環境を考えるとともに、地域の活性化などを目的とする企画内容が多く、それが最近の傾向のように思う。
 太子町立中学校社会科学部の企画は、生物の触れ合いと、地域の魅力を発見しよう、であったし、須佐コミュニティセンターは、歴史と自然を地域の人々から学ぶ、という企画を実践した。学校の授業で、限られた時間と予算のなかで、子どもたちが自然の大切さを学び、環境を守るために、先生やPTA、さらには地域社会が一体となって取り組んでいる。

 一方、一般部門は企画内容のスケールが大きくなっている点が、最近の傾向のように見える。安藤百福賞を受賞した星美ホームの企画は、海抜ゼロメートルから後立山連峰を断続的に登るという企画であった。後立山の白馬岳に登り、大雪渓を下降して、五竜岳、鹿島槍ヶ岳をそれぞれ登頂と下降を繰り返すという、プロの登山家でも労力のいる企画を、異年齢の子どもたちが助け合いながら実践した。
 また、寺子屋つばさ100km徒歩の旅は、猛暑の中、熱中症対策を行いながら、地域やOB達が支えた。かつて参加した学生や、社会人となったOB達も、この事業にボランティアで参画した。やがてその子どもたちも、この100km徒歩の旅に参加する、という循環型事業になることと思う。

 トム・ソーヤースクール企画コンテストの実施企画の特徴的な傾向は、自然体験と環境保護をベースとしながら、地域社会を巻き込むような企画が増えてきたことだろう。そして「ワクワク、どきどき感」が多くなったように思う。
 受賞団体の報告を聞きながら、過去17年間の経過を振り返りながらそう思った。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員