− 第583回 −  筆者 中村 達


『新幹線からスマホで富士山を撮る』

 年末、今年最後の出張で東海道新幹線に乗った。新幹線に乗る機会は多いが、車窓からの景色を楽しむという風情は残念ながら少ない。しかし、富士山だけは特別で、何度見ても飽きることはない。
 ただ、車窓から雲がかかっていない、スッキリとした富士山が見えることは少ない。雲ひとつない青空で、山容の全てを見ることができれば幸運だ。

 東京へ向かう日は、すっぽりと雲に覆われていたので全く見えなかった。しかし、復路は雲ひとつない快晴だった。今日は富士山の全容が見えると思った。
 いつもなら、東京を発って三島あたりで眠たくなってウトウトするのだが、富士山を見たいのと撮影をしたいのとで、眠気は吹っ飛んでしまった。
 箱根のあたりだろうか、真っ白な富士山の山頂がチラチラと見え始めた。富士山が見えだすと、乗客の多くがスマホでシャッターを押し始めた。外国人観光客もデジカメやスマホで、盛んに写していた。
 ただ、新幹線の車窓から撮影するのは、それなりに難しい。300キロもの高速で走るので、いい撮影ポイントだと思ってシャッターを切っても、鉄柱や電線、建物それに防音壁が写り込んでしまう。

 私の場合もスマホで撮影している。画角はあまり引くと富士山が遠くに写ってしまうので、少し寄り気味にして、富士山が見え始めたら、とにかくヤタラメッタラシャッターを切るようにしている。ダメな画像は後で消去すればいい。結果、10枚に一枚程度は、なんとか見られる画像が、記録程度には撮れている。シャッター音は周囲に迷惑がかからないよう最小にしている。
 好みの撮影ポイントは、富士川あたりだ。建物も少なく富士山がスッキリ見える。

 今年もいろいろあったが、富士山が気持ちよく見えたので、スッキリした気分になった。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員