− 第580回 −  筆者 中村 達


『スノースポーツのシーズンがやってきた』

 年も押し迫って慌ただしくなってきた。そして、今年は雪が遅いようだが、スキーやスノボのシーズンもやってきた。と言っても、最近ではTVでゲレンデがオープンした程度のニュースしか目にしなくなった。
 バブルスキーの頃(1970~1980年代)は、この時期にはすでに初滑りは済ませていた。立山や志賀高原などで少々雪が少なくても、滑っていた。また、仕事を終えるとスキーの専門店に出かけて、いろいろと物色していた。と同時に、雪山登山用の装備のチェックと、新製品購入の資金の算段に、あれこれ悩んでいたと思う。冬のボーナスは、スキーと冬山登山の費用で、すべて吹っ飛んだ。
 12月に入ると、夕刊のゲレンデ降雪覧を見るのが楽しみで、それが日課だった。いまや、私のような人種は化石化しているのかも知れない。

 現在ではゲレンデ情報は、ネットでリアルタイムに見られるし、用具や装備類も通販で簡単に手に入る。が、その反面、スノースポーツ人口は激減である。楽しめる環境は整ったのに、楽しむ人が非常に少なくなったのは皮肉としか言いようがない。

 どうすれば、若い人たちをスノースポーツに誘えるのか、などと言う論議はかなりおこなわれてきたし、これからも続くと思う。が、結局はライフスタイルの問題に帰結するのではないか。スキー全盛期の頃とは考えられないほど、遊びや趣味も多様化している。楽しみ方の選択肢が増えたのも大きい。
 また、スマホなどの情報通信機器がライフスタイルに組み込まれて、そのコストも負担になっているように思う。
 そして、スノースポーツはコストがかかる。道具はレンタルするにしても、例え一泊のツアーであっても、数万円の出費は覚悟しなければならない。何より、スノースポーツはすぐに上達するわけではなく、それなりの年数がかかる。個人差もあるが、私の場合はある程度滑れるまでに、5年ほど費やした。そう考えると、出費はかなりのものになる。このあたりも、大きな問題なのだろう。
 信州の老舗ホテルオーナーが「いまや外国人がいないと経営はやっていけない」と語っていたのが耳に残っている。

※画像は本文とは無関係です

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員