− 第566回 −  筆者 中村 達


『安藤百福センターの森』

 安藤百福センターが竣工してから(2010年5月21日)8年が経過して、センターの敷地は、ずい分森らしくなったと思う。それまでは木々は天空を目指して、まるで競うように、長く、長く伸びていた。ケヤキ、ミズナラ、シイ、クヌギ、それに桜の老木などが茂る鬱蒼とした森だった。
安藤百福センターを利用いただいたみなさんにお願いして、研修プログラムに間伐や草刈りなど、森の整備を加えてもらったこともある。利用者によるボランティアや、シルバー人材センターの方々にも整備にご協力をいただいた。
 その間、散歩道が出来、それがおよそ60㎞の浅間・八ヶ岳パノラマトレイルの整備につながった。また、日本を代表するアーティストの協力で、7棟のツリーハウスができた。このツリーハウスはニューヨークタイムズの電子版などでも紹介され、海外からも見学者が訪れている。

 休日には、ツリーハウスを見学する子ども連れの姿を、よく見かけるようになった。森を散策していると「あなたも見学ですか?」と声をかけられることがしばしばだ。
 また、この5月からはビオトープ作りがはじまった。生物多様性の保全を目的に、小諸市周辺に棲息する絶滅危惧種のチョウなどの昆虫が、住みやすい環境を整えるプロジェクトだ。この活動は日清食品グループのCSRの一環として行われている。

 およそ2万坪の安藤百福センターの森は、まだ未整備のエリアもある。自然を保全しながら、いかに私たちに、そして生き物たちにとって住み心地のいい森にするかが課題でもある。

 梅雨の晴れ間の森は、緑も濃くなって、もっとも躍動的な姿になった。夏が過ぎ、木々が色づくころには栗の実がたわわに実る。動物や昆虫たちとの栗拾い競争がはじまる。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員