− 第564回 −  筆者 中村 達


『山の日』

 今年の8月11日の山の日記念全国大会は、鳥取県の大山で開催される。この山の日記念全国大会は3回目で、第1回は長野県上高地、第2回は栃木県の那須で行われた。
 山の日はけっして登山の日ではない。自然に感謝し、自然に触れあい自然を大切にする日である。絵的には山を歩いて、山頂で集うのがわかりやすいかもしれないが、登山の記念日ではない。そのことがまだ完全に理解されたとは言い難い。

 ただ、この国の地勢は山岳地帯が大半といってもいい。平坦なところは住宅地や工場などが占めているので、アウトドアフィールドは必然的に山になる。そのため、自然体験活動にせよ、野外教育のステージでも、標高の高い、低い、の差はあるものの、山岳を無視しては成り立たないように思う。
 米国やヨーロッパは氷河をもつ山々は、天空に聳えているので、そのすそ野は広大で、トレイルはどこまでも平坦に続くこともままある。広大な森や平原が地勢の特徴でもある。
 その地勢の異なりは、アクティビティやライフスタイルに影響を与えるともいえる。

 日本は海からいきなり山、ということも多く、山の国だと実感することがしばしばだ。
 その山々から限りない恩恵を受けてきた。その山を含んだ自然に感謝するのは当然で、それが「山の日」の制定につながったと思う。
 山というフィールドを中心にして、山岳団体だけでなく環境や教育など多様な分野の、さらなるコラボとコネクトが必要だと思う。「山の日」をきっかけに、子どもたちが自然を好きになって、その大切さを学び、そして安全に山を歩いてくれるようになれば意義深いし、この国の未来は明るいように思っている。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員