− 第557回 −  筆者 中村 達


『桜のある風景』

 夏のような暑さになって、桜が一気に満開になった。滋賀は内陸部で、そのうえびわ湖という水瓶があるので比較的気温が低く、桜の開花も近隣の府県と比べると遅いようだ。それでも例年に比べると開花は早い。
 近くの森林公園も開花してそうなので、カメラを持って出かけてきた。朝の通勤時はまだ5分咲き程度だったが、お昼には7、8分程度に開花していた。

 公園の駐車場は満杯で、平日というのに大勢の人たちが桜を見に訪れていた。大勢といっても、都会に比べるとうーんと少ないが・・・。
 桜がなぜ人々を魅了するのか。まずは色がピンクで一斉に開花して何とも美しいこと。そして、寒い冬が終わって、大地が、自然が躍動しはじめるのを、桜の開花が教えてくれる。それで心がウキウキする。ときめく。そんな感じだろうか。毎年同じ光景だが、飽きることがない。

 もう半世紀以上の昔だのことだが、小学校の入学式も桜が咲いていた。クラスと名前が書かれた白いハンカチを、胸にピン止めしてもらったことを憶えている。中学の入学式は、大きめの学生服を着せられたが、桜の記憶はない。高校の入学式では、校庭に桜が咲いていた。数日後、京都の植物園に出かけた。学生服を着て桜の下で撮った写真がアルバムにあった。
 ところで、毎年、桜を撮りにでかけているが、桜の撮影は難しいように感じている。500枚はハードディスクに記録されていると思うが、これというのは非常に少ない。開花している状態を撮影しても、どうもうまくいかない。納得できないことがほとんどだ。私の腕では、引くか寄るかしかないようだ。
 結局、桜は桜だけでではなく、自然の中で、風景の中で、その美しさが表現されているように思う。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員