− 第556回 −  筆者 中村 達


『大江山連峰トレイル』

 先日、京都府北部の大江山へ出かけてきた。大江山は酒呑童子(しゅてんどうじ)という鬼の頭領が住んでいたと伝えられる地だ。
シンポジウムが開催される会場に近づくにつれ、鬼の看板が多くなった。マンホールの蓋も鬼だった。大江山は赤石ヶ岳(736.2m)、主峰の千丈ヶ嶽(832m)、赤岩山(669m)などの連山で、大江山というのはこれらの山々の総称だ。標高は千メートルにも満たないが、原生林に覆われた趣のある山域で、丹後天橋立大江山国定公園に指定されている。

 赤石ケ岳から千丈ケ嶽を経て赤岩山に至るルートは、「赤赤縦走路」といわれ距離は16km。このほかに宮津から京都への古道(10km)や、ダイラ道(4km)、天橋立妙見山から題目山ルート(9km)など、4つのトレイルが「大江山連峰トレイル」として整備された。
 京都府庁、地元自治体、観光事業者、NPOなどが中心となって、大江山連峰トレイルクラブが組織化され、トレイルの開通を記念してシンポジウムが行われた。シンポジウムには地元関係者や住民などおよそ150人が参加した。

 いま、このような動きが各地で盛んになってきている。「歩く」が時代のトレンドであることは疑いようがなくなった。自然へのインパクトをできるだけ少なくし、自然を楽しみ汗を流す。そのステージが単にピークハントを目的にする「登山」だけではなく、どこまでも続く山旅の道になる。そして、山を旅するスタイルが広がっていくことを期待している。
 この大江山連峰トレイルのすぐ北には有名な天橋立がある。私の小学生の頃は、臨海学校は天橋立だった。どのあたりか記憶はないが、京都からは途中で曲がりくねった山道となり、観光バス一台がようやく通れるような狭くて急な個所もあった。ひどい揺れで、バスに酔ったのは苦い思い出だ。いまは、京都縦貫道を走ると、私の自宅からでも2時間あまりで会場に着き驚いた。京都市内や近辺からだと、日帰りでも行けることがわかった。

 シンポジウムの翌日、エクスカーションが行われたが、残雪が多いとかで山麓のトレイルを歩くことになった。天の岩戸を訪ねたり、吊り橋を渡ったりと、それはそれで楽しかった。あらためて大江山連峰トレイルを歩きたいと思う。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員