− 第555回 −  筆者 中村 達


『春のハイキングの装備に思う』

 桜の開花が言われはじめるこの時期、そろそろハイキングにでも行きたくなる。木々の芽吹きを見ながら、冬枯れの終わりを感じるのもいい。
 ただ、この時期はアウトドアに出かけるには、防寒対策が必要だ。晴れの日、歩いている時は汗ばむこともあるが、低山でも谷筋では気温は低く感じることがある。雨が降れば体感温度はかなり下がるし、山中では低体温症対策も必要だ。

 久しぶりに春のトレイルでも歩こうと、必要な装備品を並べてみた。雨具、薄手のフリース、薄手のダウン、パーカー、毛の帽子、手袋などはこの時期必携だろう。これに目的とする山やトレイルによって、必要な装備は増える。バーナー(コンロ)、クッカー、食器などだ。
 もちろん、ファーストエイドキット、水筒、食料に予備食料、地図、マッチ(ライター)、小型ナイフ、スプーン、ヘッドライト、サングラス、メモ用紙、タオル、ティッシュペーパーなどは常に持参するようにしたい。また、エマージェンシーシートも、できれば装備品に加えてほしい。
 私の場合、たいていはバーナーとコンロを持っていくようにしている。昼食時にカップヌードル用のお湯を沸かしたり、食後にコーヒーを入れるためだ。忘れてはならないのがライターかマッチ。点火装置がうまく作動しない場合もある。また、水が入手できないときに備えて、飲用以外に1L程度の水を入れたボトルを持っていくことが多い。
 服装は発熱素材のアンダーウェアを上下に着て、その上も発熱素材のシャツを着る。パンツはポリエステル製だ。その時の気温や風などによって、パーカーやフリースを着ることもある。靴は目的によって選んでいるが、防水透湿シートがラミネートされたシューズを履くことが多い。これらのほかに、スマホ、デジカメも必ず持っていく。

 と、書いて実際に並べてみると、日帰りの近郊ハイキングでもそれなりの重さになる。それでも装備が進化して、昔に比べれば随分軽くなった。
 かつて、装備の軽量化は安全と反比例するのでないか、という議論が行われたことがあった。しかし、いまは素材の開発が飛躍的に進んで、その論議は意味をなさないようになったのではと感じている。もっともそれは40年以上も昔のお話である。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員