- 第551回 -  筆者 中村 達


『内藤とうがらしで地域の活性化』

 先日、横浜のカップヌードルミュージアムで「第16回トム・ソーヤースクール企画コンテスト」の表彰式が開催され出席してきた。この日は前日から雪が降って、家を出る頃には20㎝以上の積雪があった。車の温度計はマイナス2度と表示していた。新幹線は米原付近の積雪で20分ほど遅れたが、開会に間に合ってホッとした。
 さて、今年度の文部科学大臣賞の受賞団体は伊那市立長谷中学校(長野県)だった。企画名は「中学生にできる地域おこし」~伝統野菜でふるさと長谷をHOTに~。
 過疎化が深刻な伊那市の長谷地区にある中学校の生徒たちが、伝統野菜の「内藤とうがらし」を地場産業にしようとする取り組みだ。生徒たちが栽培した「内藤とうがらし」の苗を高齢者に配って育ててもらい、育った「内藤とうがらし」は、加工されてラー油として地域の道の駅や大型店で販売されるようになった。この地域の活性化とビジネスにつながる熱心な取り組みが評価された。

 いま、長谷地区は伊那市に合併されているが、その前は長谷村だった。実はこの長谷村には、地域活性化の取り組みを見るために、何度となく訪れる機会があった。もちろん「内藤とうがらし」のことは知る由もない10年以上も前のことだ。当時の長谷村の分杭峠は、いわいる「ゼロ磁場」が発見され注目されはじめていた。この分杭峠は中央構造線が通り、かつては秋葉街道の峠の一つだった。
 近くには瀟洒な宿泊施設も出来、階上にはピラミッドを模した部屋もあって、そこに寝転んで気を感じようとしたこともあった。

 私が訪ねた当時は、林道からゼロ磁場が強いという場所を覗いただけだったが、その後テレビなどでの報道もあって一躍脚光を浴び、全国から大勢の観光客が訪れるようになった。林道は狭いままだがゼロ磁場付近は、整備されて売店なども出来、最盛期には賑わいを見せているようだ。
 が、その一方で過疎化が進み、かつては300名ほど生徒がいた長谷中学校は、現在は42名になった。観光客が増えても過疎化が進むというのは、長谷地域に限らず全国的に見られる現象なのかもしれない。
 過疎化と観光はパラレルに動いていくのか、いつか軌を一つにするのか、大きなテーマだと思った。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員