- 第548回 -  筆者 中村 達


『アウトドアライフスタイル市場』

 昨年末、久しぶりに大阪駅近くのショッピングモールを歩いた。フロアーはファッションブランドがほとんどだった。
 あるモールではツーフロアーは、多くがアウトドアブランドで、若い人たちでにぎわっていた。機能素材が使われている高価なパーカーやダウンウェアがディスプレイされていた。アウトドアブランドとしては私の常識では高価に思えるが、ファッションブランドとしてはリーズナブルだと聞いた。
 一昔前なら、登山店やアウトドア専門店でしか手に入らないものが、ファッションブランドとして脚光を浴びている。フランス、イタリア、ドイツ、米国などの有名ブランドとともに、最近ではカナダや北欧のアウトドアブランドの進出が著しい。これらのショップではあくまでファッションだから、ギアやパック類などはディスプレイとして置いてある程度で、販売用としては少ないようだ。
 本来的なら登山靴、パック、ハーネスなどの登攀用具、ウェア、テントなどがあっても不思議ではないが、これらの店舗ではアウトドアウェアは、あくまでファッション材という位置づけであり、アウトドアアクティビティとはかなりの距離があるように思える。かと言って違和感があるわけでもなく、それはそれでいいのではないか。

 かつて、ヘビーデューティとか、アメカジなどが流行った時代があった。街でもアウトドアティストを楽しんだ。アーバンアウトドアズは、それでもなんとなく汗臭さや、バタクサさが残っていたように記憶している。
 しかし、現代のアウトドアファッションとかアウトドアティストは、これとは一線を画して、オシャレさに特化しているようにも感じる。これを、アウトドア業界ではライフスタイル市場と呼んでいるらしい。
 マーケットとしてアウトドア市場を見ると、リアルなアウトドアズは頭打ちで、これから期待できそうなのが、このアウトドアライフスタイルなのだそうだ。が、こうなってくるとファッション業界とアウトドア業界との線引きが難しい。
 結局はユーザーが選択するのだろうが、アウトドアファッションの人気が高くなって、日常的に広がっていけば、アウトドアへ向かう人たちも増えてくるのではと期待する。

 ファストファッションショップで選んだパーカーを着て、近郊の山を歩いても全く問題もなく快適だった。ファッションとして販売されているものであっても、アウトドアブランドの高機能素材のウェアであれば、高所や厳しい登攀でも十分活用できると思う。ただ、街で着るにはオーバースペックと言われるかもしれないが・・・。

※画像はイメージです

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員