- 第543回 -  筆者 中村 達


『アウトドアズがライフスタイルになる日』

 アウトドアズは少しずつではあるが、広がりを見せている。国内のアウトドア市場データ(矢野経済研究所「アウトドアビジネス2017」)というのがある。それによると、およそ4300億円市場だそうだ。登山、ハイキング、キャンプなどの用品、用具、ウェア類などの合計だ。
それに、ファッションや生活雑貨業界のものを入れると、もっと大きくなるのではと想像する。ファストファッションのアウトドアウェアや、100円ショップのアウトドア用グッズなどだ。

 データによると登山・ハイキングといった伝統的なアクティビティは伸び悩み、ライフスタイルの人気が高いという。ライフスタイルと言われても判然としないが、ファッションや日常生活の中での着用とか使用のことを指すのだろう。このあたりをライトアウトドアとも言うらしい。
 例えば、トレッキングシューズを通学に使ったり、デイパックを通勤用としたり、ダウンを日常着としているのは、ごく普通の光景になっている。

 また、登山やアウトドア専門誌に限らず、多くのモノの雑誌やファッション誌などでも、アウトドアウェアやギアは、毎月のように、かわるがわる特集が組まれ、当たり前のように取り上げられている。
 登山靴はアーバンアウトドアというシーンでも、一つのアイテムになっている。歩きにくいと思うのは、私のような古い山屋だけなのかも。
フィッシングバッグがカジュアルに使われ、高価な防水透湿性素材が採用されたパーカーが、オシャレ着とされるようになっている。

 とはいえ、それはそれでいいのではないか。ヘビーデューティなアウトドアファッションを身にまとうと、フィールドがなんとなく見え、山や高原に思いを馳せることが出来るかもしれない。うまく行けば、少し自然の中を歩いてみよう、キャンプに行ってみたいということになる。現にそんな若い人たちによくお目にかかる。
 『アウトドアズがライフスタイルになる日』という本を15年ほど前に書いた。ようやくそんな時代になった。少し早すぎた。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員