- 第542回 -  筆者 中村 達


『白馬山麓にて』

 白馬山麓に出かけてきた。あいにくの空模様で時折小雨が降った。気温は例年より低くフリースとパーカーを着た。観光客や登山客も少なかったが、駅前のアウトドアショップはどの店も盛況だった。あるショップのスタッフが「このあと11月に入れば、お客さんは少なくなりますが、スキーシーズンになれば、また賑やかになります」と語ってくれた。

 ある宿の主人は「スキーは外国人を入れないとやっていけない」と、少し寂し気だった。一方で、アウトドアショップでは、外国人スキーヤーやボーダーでよく売れますと言っていた。外国人相手にどんな商売をすればいいか、頭を悩ましている宿の若い経営者にも会った。
 帰る日になってようやく雨が止んだので、栂池自然園に出かけた。ここ20年以上、毎年のように秋の同じ時期に栂池を歩いている。そのたびに山々の紅葉が違っているのが面白い。山全体が美しく色づく年や、稜線が雪で覆われ、山麓から三段紅葉が見られる幸運な年もある。反対に、色づきがいま一つであったり、気温によってまだ早かったり、遅かったりと、自然は人間の都合に合わせてくれるわけではない。

 この日、すでに紅葉は終わっていて自然園を歩く人は少なかった。例年なら木道にカメラの三脚が林立するのだが、そんな情景もなかった。時おり顔を出す小蓮華岳の頂稜付近は、昨夜の降雪で少し白くなっていた。
 ロープウェイの係員が紅葉のシーズンは終わりです。間もなく冬がやってきますとアナウンスしていた。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員