- 第541回 -  筆者 中村 達


『北陸新幹線から見える風景』

 東海道新幹線は月に2、3回は利用する。平日はビジネス客が多く、パソコンを触ったり、スマホを見たり、新聞や本を読んだりしていて車内は静かだ。
 また、車内販売や自販機などもあって便利だ。私事で恐縮だが、安藤百福センターに出かける場合は、京都か米原から新幹線に乗ることが多い。東京で乗り換えて佐久平、あるいは小諸で下車する。安藤百福センターまでdoor to doorでおよそ6時間はかかる。その間、車窓から何度見ても飽きないのは富士山だ。上りだと、富士川の鉄橋あたりからが美しく見える。富士山とすそ野の風景以外は、丘陵や田園、あとは町と工場であまり印象は残らない。
 東京からは街並みが続き、1時間ほどでトンネルが連続して軽井沢。そして何本かのトンネルを通りすぎると佐久平だ。

 一方、北陸新幹線が開通してから、ときどき思い立ったように日本海まわりで行くことがある。時間は東海道新幹線経由とさほど変わらない。
 北陸線から金沢で北陸新幹線に乗り換え、佐久平で下車するのがルートだ。北陸線には芦原温泉、山代温泉や加賀温泉などがあり、平日でも観光客が多い。一応に談笑して、楽しそうだ。京都から湖西線を通っても、米原からの北陸線でも、びわ湖が見える。長い敦賀トンネルを抜けると、右手には福井の山々が連なり、石川県に入ると白山が顔を出す。
 金沢で北陸新幹線に乗り換える。富山県に入ると、晴れていれば車窓に立山連峰が広がる。毛勝山や剣岳に連なる大窓、小窓、三の窓そして早月尾根がよく見える。立山三山から越中沢岳(?)、そして雄大な薬師岳の全景が視野に飛び込んでくる。何度見ても山岳部時代の情景が、リアルに蘇ってくるのが不思議だ。

 このように北陸線、北陸新幹線は立山連峰や白山などの飽きることのない風景が堪能できる。雄大な山岳の大パノラマは、推薦できる車窓の風景だと思う。
 ただ、注意しなければならないのは、乗車する列車にもよるが、車内販売や自販機がないことが多い。特に私が利用する在来線の「特急しらさぎ」はそうだ。さらに、金沢での乗り換え時間が短いうえ、ときどき在来線は延着がある。連絡待ちはしてくれるが、弁当を買う時間はほとんどない。そして新幹線の「はくたか」は、車内販売や自販機がないことが多い。へたをすれば、自宅を出てから6時間もの間、なに一つ口に入れることなく座ったままとなる。実は、先日あやうくそんな目に合うところだった。金沢駅で発車1分前におにぎり3個と水を、何とか買い求め飛び乗った。乗り込んだと同時にベルが鳴った。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員