- 第527回 -  筆者 中村 達


『カメラの進化と山』

 仕事柄カメラは必需品だ。このところカメラの進化が早いので、ついていくのが大変である。はじめて自分のカメラを手にしたのは、小学3年生の頃だったと思う。フジPETというブローニーフィルムを使うカメラだった。遠足に持っていき自慢したことを覚えている。そのあとは、父親のロード35という35㎜カメラを使っていた。完全なマニュアルカメラだが当時人気があった。昨年の夏、信州で立ち寄った古民家のカフェに、古い登山専門誌が置いてあった。懐かしくてペラペラめくっていくと、背表紙にそのカメラの広告があった。この広告で、はじめて素性を知った。
 高校生になってからは、ハーフサイズのオリンパスPENをもっぱら愛用していた。大学生になって、一眼レフのペンタックスSPを手に入れた。その後は、カラコルムなど海外に出かける機会が何度かあり、そのたびに一眼レフとレンズが増えていった。

 いま、フィルムカメラはすっかり少なくなってデジカメが全盛期だ。デジカメは進化が早すぎて、ついていくのが大変だ。ちょっと目を離すと新しい用語が出てきたりして、それを理解するのに追われている。私が初めて買ったデジカメは、コンパクトデジカメだった。当時はまだデジイチはなかったように思う。あったとしても異常に高価で、とても手が出せなかっただろう。
 そのデジカメは300万画素だった。3万数千円だったと思う。記録媒体はコンパクトフラッシュで、64MBのものを購入した。これでも1万円近くしたのではないか。その後、画素数競争にはまってしまい、毎年のようにデジカメを買い換えた。カードもコンパクトフラッシュからSD、SDHCになり、さらに大容量のSDXCの登場となった。ついこの間まで、8GBもあれば十分だと思っていたが、いつの間にか16、32GBがごく当たり前になって、そのたびにカードが増えてしまっている。もっともカードは劇的に安くなり、16GBclass10でもネットでは1000円前後で売られている。

 デジカメはコンパクト、高画素化は当たり前で、デジイチもカメラ各社がミラーレスの新製品を次々と発売している。また、APS-Cからフルサイズへと変遷する勢いで、高画素化と受光素子や画像処理エンジンの開発にしのぎを削っているようだ。
 ただ、デジカメがいくら高品質になっても、アウトプット機器の性能によって、それが生かされるかどうかは疑問だ。また、何といってもアウトドアでは、軽量化と防滴性は必要で、このあたりの落としどころも一考である。もっとも、若い人たちからスマホで十分と言われれば返す言葉がみつからない。
 保管ケースには使わなくなったフィルムカメラとレンズがたくさんある。20万円したフィルム一眼は、中古市場で数万円になった。頑丈で定評のあったマニュアル一眼も同じようなものだ。評価が高く、山でよく撮影に使った645サイズのカメラも、中古市場でたったの2万円だった。煩悩の塊が保管庫にある。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員