- 第521回 -  筆者 中村 達


『ハイキングの風景』

 お花見のシーズンともなると、歩く人がずいぶん多くなったと感じる。暖かくなって、里山やハイキングコースを歩く人達が確実に増えている。若い人たちも目立つようになった。子ども連れのファミリーハイカーも多い。
 彼らはパーカーを着て、足元はハイキングシューズかトレッキングシューズ。パーカーの色は、男性はベージュかグレーか黒、女性はピンク系が多いように見える。ただ、若い人達は、アウトドアブランドのカラフルなものが多いようだ。
 ストックを持っている人も増えた。ポールウォーキング?(ノルディックウォーキング)も知られるようになって、ストックを使って歩く人たちも見かけるようになった。
 そして、ほぼ全員がパックを背負っている。いわゆるデイパックだ。パック、つまりリュックサックのことだが、これは至るところで販売されている。有名アウトドアブランドから、無名のモノまでごく普通に日常生活で使われているので、アウトドアでの流用は当たり前になった。

 一時はアウトドアファッションといえば、登山やアウトドアブランドが大半だったが、いまではアパレル系、スポーツ系も目立つ。お手頃価格もあって、この種のハイキング用品やウェア類は入手しやすくなった。また、一昔前まで、防水透湿性素材が使われたレインウェアは高価だったが、いつの間にかスーパーなどで売られているリーズナブルなものにも、防水透湿のラベルがぶら下がっている。性能のほどはわからないが、里山のハイキング程度であれば使えるような気がする。
 よくよく見まわしてみると、かつては登山などに特化していたものが、ごく普通の日常生活用品に進化?している。モノの良し悪しは多少はあるだろうが、里山ハイキング程度あれば問題はないのではないか。これらのモノの動きは「歩く」を後押ししているようにも思う。

 一方で、流通も大きく変化している。実売店の購入からネットにシフトしつつある。実物を店頭で見て調べ、モノはネットで手に入れる、という人も多い。私も時々そうすることがある。あるアウトドアメーカーの幹部が、店頭でモノを並べて売る時代が終わるのだろうかと顔を曇らせた。
 とはいえ、サイズモノのアウトドア用品は、目で確かめ、着用してみないとわからないものも多い。これまでいろいろなアウトドア用品やウェアをネットで買ってはいるが、サイズ違いや画像と異なるものも多かった。私の場合、失敗とは言わないまでも、残念比率は2割程度となっている。残念比率を減らすには、失敗を重ねるしかないのかも知れない。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員