- 第519回 -  筆者 中村 達


『第4回ロングトレイルシンポジウム』

 2月25日に「第4回ロングトレイルシンポジウム」が、長野県小諸市の安藤百福センターで開催された。長野県知事や小諸市市長をはじめ、近隣の首長、県の幹部のほか、国の諸官庁や出先機関の職員、あるいは根室市や鹿児島市までの、全国の自治体職員や関係者などが多数参加した。もちろん、ロングトレイル関係者やアウトドアズ産業界、青少年団体、山岳関係者などのほか、一般のハイカーや市民などの参加もあった。中には修験者もおり、『歩く』道への関心の高さを物語っていた。
 会場はスクール形式で100名だが、テーブルをとると140名が座ることが出来るので、急きょ定員枠を広げて開催した。

 さて、今回のテーマは「信仰の道から現代のロングトレイルを考える」だった。ロングトレイルといえば、海外のトレイルがイメージされがちだが、日本には仏教伝来以降、信仰の道が発達してきた。比叡山の千日回峰行の道、高野山への道、そして四国のお遍路などが1200年以上の歴史のなかにある。また、国内の数多くの山々の頂や古道には、石仏や祠、あるいはお地蔵さんなどが多数あって、ハイカーや登山者、アルピニストなどが手を合わせる姿が見られる。国内に整備されつつある、多くのロングトレイルにも同じ情景がある。
 そこで、信仰の道が現代のロングトレイルにどのような影響を与えているか、を考察しようというのが目的の一つだった。

 冒頭にはこの自然体験.comを運営している安藤財団の理事長から、「歩く文化」の推進の一環として、また、子どもたちの自然体験プログラムに、ロングトレイルを取り入れることの重要性の解説があった。
 環境省からは全国に張り巡らされた自然歩道の動向について、大阪府からは100万人が歩くといわれる金剛山・葛城山系のダイヤモンドトレールの説明が行われた。さらに、鳥取県からは昨年10月に開催された、WTC(World Trails Conference)の経緯と開催報告があった。世界の19か国・地域から200名ものトレイル関係者が鳥取県に参集したのは国内では初めてであり、驚きをもって報告を聞き入る参加者が多かった。

 さて、主題の一つであった「信仰の道から現代のロングトレイルを考える」は、比叡山延暦寺の千日回峰行者大阿闍梨さんを囲んで、信越トレイルクラブの代表、ロングトレイル協会の会長らと鼎談という形で行われた。
 印象に残ったのは「回峰行を始めるにあたって、大変だと思ったことはない。トレイルを歩く人が歩く前に、大変だと思うことは少ないはず。」「修行を続けると日々見える風景が変化してくる。感性が取り澄まされて見えるもの、聞こえてくるものが違ってくる・・・。」という趣旨のお話だった。
 聞きながら私自身を振り返って、煩悩の多さと感性の鈍化に恥じ入るばかりだった。


※画像はいずれも安藤百福センター提供
注)近く「第4回ロングトレイルシンポジウム」の報告レポートが、ロングトレイル協会のHP(http://longtrail.jp/)に掲載される予定です。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員