- 第510回 -  筆者 中村 達


『スキーキャリア』

 今年は例年より初雪の便りが早く、積雪も期待できそうだ。スキーの関係者にとってはホッと胸をなでおろしていることだろう。昨年はシーズン途中、で営業を止めたスキー場も多かった。
 もう20年以上も前のことだが、1992、3年あたりが、スキーが最盛期だった。スキー場の入込客も多く、用品やウェアなども大変よく売れた。街中を走る車、中でもRVと呼ばれていたワゴン車やクロカン型の4WD車には、必ずといっていいほどスキーキャリアがセットされていた。年末ともなると、スキーやスノボを搭載したそんな車をよく見かけた。年末の高速道路はスキー場に向かう車で、渋滞が発生していた。私もその中の一人だった。

 が、いまではスキーキャリアをセットした車などは、ほとんど見かけなくなった。スキー自体がカービングで短くなって、車の屋根に積載しなくても、トランクや足元に置けるようになったこともあるかも知れない。ワゴン車なら車内に積むスペースは十分あるからか。
 それにしても、キャリアをセットした車は、ほとんど見かけなくなった。カー用品店でも、かつては店頭に多種多様なキャリアが並んでいた。シーズンが始まると、人気のあるキャリアは品薄状態だったのを覚えている。しかし、昨今は店の隅に追いやられている店舗も多い。

 先日、私の古くから知り合いのアウトドアショップの店長が訪ねてきた。スキーの話をすると、去年は雪不足で厳しいシーズンだったが、今年は何とかと期待しているが、どうでしょうね、と顔を曇らせた。スキー離れがひどく、特に若者たちの状況が悪いそうだ。確かに非正規労働者が増え、中でも20歳代の若者たちに、そんな状況が目立つ。年収で200万円以下の彼らにとっては、スキーやスノボなどをやっている金銭的余裕はないのかもしれない。
 私たちの若い頃は、いまは給料が安くっても将来が、未来が見えていた。だから無理をしてスキーに出かけても、何とかなるような気がしていた。現にそうなったように思う。
 スキーキャリアを見かけなくなったのも、やはりスキーやスノボをする人たちが激減したのが、最大の理由のひとつかもしれない。

※画像はイメージで、本文とは無関係です。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター副センター長、日本ロングトレイル協会代表理事、全国山の日協議会常務理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、全日本スキー連盟教育本部アドバイザーなど。アウトドアジャーナリスト。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員