- 第497回 -  筆者 中村 達


『ハイキングのウェアは半パンツ、半ズボン?』

 梅雨が明けると、子どもたちは夏休みだ。トム・ソーヤースクール企画コンテストの支援50団体が発表されたが、夏休み中の企画が大半だ。その中でも、「歩く」というコンテンツが目立つようになった。確かに「歩く」は、自然体験活動や野外活動の基本だ。歩くことで、自然を身体で感じることが出来る、移動すると風景が変わる。山に登れば眺望が開けて爽快な気分になる。何度登ってもその気持ちは変わらない。
 山を登ると気温も変化するし、植生もはっきりと違ってくる。季節が変わると、この変動は如実に表れる。この変化を子どもたちにわかりやすく説明できれば、山が楽しくなる。何しろ自然の変数は無限だから。

 昨年のいま時分、イタリアのドロミテ山塊のトレイルを歩いた。訪れた先々の山塊で、多くの子どもたちにお目にかかった。家族連れも多かったが、学校単位のハイキングが目立った。

 ドロミテはオーストリアとの国境近くにある山塊で、石灰岩の山群が散在していて、それぞれに山麓をめぐるトレイルがある。そのトレイルの起点となる駐車場には、彼らが乗ってきたバスが並んでいた。
 そして、先生たちや地元のガイドの引率によるハイキングが行われていた。中学生だろうか、好きな格好で、てんでバラバラに歩いていた。パックを担いでトレッキングシューズを履いているのだが、大半の子どもたちは半袖、半パンツ、そして帽子をかぶっていない生徒も多い。日本なら帽子は絶対にかぶること。熱中症対策だ。半袖半パンツは禁止も多いかもしれない。事故防止や虫刺されの予防、ということになる。

 民族的なもの、歴史的なこと、地勢学的な理由・・・などなど、いろいろあるのだろうが、これはフランスやスイスでもほぼ同じような光景を見る。
 とはいえ、「歩く」が子どもたちに、これほど行われていることに驚いた。日本の学校では、事故を回避するために集団登山を取りやめたところも多いと聞く。それに先生の登山経験が、以前と比べて少ない、との指摘もある。それにもまして、先生が忙しすぎて、とてもそこまで手が回らない、という声も聞こえてくる。
 8月11日は今年からはじまる、国民の祝日「山の日」だ。この「山の日」を機に、子どもたちの山を歩く、が広まっていけばいいのにと願う。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター副センター長、特定非営利活動法人日本ロングトレイル協会代表理事、全国「山の日」運営委員、公益財団法人日本山岳ガイド協会特別委員、国際自然環境アウトドア専門学校顧問など。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員