- 第495回 -  筆者 中村 達


『やっぱりマッチ?』

 夏山を前にコンロ類の点検をしようと思っている。いつの間にか増えてしまったので、点検も面倒くさくはある。
 最近のガスコンロは、着火装置が付いている。大変便利で安全だが、この着火装置も使用する前には、点検しておくことが大切だ。山中で点火しようと思って、何度となく試みたが、発火するものの着火しないことがよくある。仲間のライターを借りて、ようやく火がついたこともあった。

 それ以来、防水パックにマッチとライターを入れて必ず持参している。ただライターは便利だが、これもうまく点火しないことがままある。点火せずにガスだけが残った使い捨てライターが、机の引き出しにゴロゴロしている。やはり確実に着火させられるのは、マッチだろう。

 マッチは自然発火(発火温度は約150°C)が、し難いといわれているし、水にさえ濡れなければ確実に火がつく。ただ、マッチの需要は大きく減少し、手に入りにくくなった。正確には、タダでもらえるところが少なくなった、と言うべきだろうか。
 かつて喫茶店や飲み屋では、当たり前のように置いてあったし、店のPRもかねて配られていた。いい宣伝媒体でもあったのだ。だから、マッチは買うものではなく、もらえるものと思っていた。しかし、禁煙が浸透して、煙草に火をつけるシーンも大幅に減少し、無料のマッチは、姿を消しつつある。

 家庭用のガスコンロは、点火装置が付いているのは当たり前だし、少なくとも都市生活がマッチを使う機会は極端に減った。オール電化も浸透しつつあるし、この先、ますますマッチを使うことは少なくなると思う。
が、上述のように、山で使う携帯型のガスコンロなどには、万が一に備えて必携である。濡らさないようにして、非常用の装備にしてリュックに入れている。

 マッチを使えない子どもたちのことが、何かに載っていたが、私の娘もいい大人になったが、いまだにマッチが使えないことを思い出した。

(次回へつづく)


■バックナンバー

■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター副センター長、特定非営利活動法人日本ロングトレイル協会代表理事、全国「山の日」運営委員、公益財団法人日本山岳ガイド協会特別委員、国際自然環境アウトドア専門学校顧問など。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員