![]() ![]() ![]() - 第486回 - 筆者 中村 達
『インバウンドとスキー』 先日、所用があって上越方面に出かけてきた。北陸新幹線は中高年のツアー客で賑やかだった。金沢駅のホームでは、私もツアー参加者だと間違われ、こちらへ並んでくださいと言われてしまった。 車窓からは前日降った雪で、山々は白くなっていたが、例年に比べると明らかに少なく見えた。 上越では先日まで、田んぼがのぞいていたそうだ。すでに地表が暖められているので、この上に雪が降ったとしても、すぐに融けてしまうだろう。暖冬の影響は、特にスキー場に深刻な影響を与えている。年が明けて連休まで、滑走可能なスキー場は少なかった。この日、私が泊まったホテルのフロントマンは、スキー客のキャンセルで大変でした、と顔を曇らせた。春休みまでどの程度雪が降るか、気がかりでならないと心配げだった。 ![]() ![]() 一方で、東北地方は例年より少ないとはいえ、それなりの降雪があった。スキー場は多くが滑走可能で、それなりににぎわっているそうだ。中でも山岳スキースキー場は、外国人のバックカントリースキーヤーが押しかけている。平均で2~3週間は滞在するので、ホテルや民宿にとっても、大変ありがたいお客だ。 日本のスキー場の雪質は、ヨーロッパやニュージーランドのアイスバーンとは異なり、ふわふわのパウダーで最高だという。それに樹林帯の中を滑れるのに驚いていて、それも大変魅力的だそうだ。しかし、彼らに対応できる、接遇できる、語学力とインタープリテーションが決定的に不足している。そのため、些細なことだが、例えばレストランや食堂などでは、彼らがオーダーしたものと実際に出てくるものと違う、などというトラブルは日常茶飯事だと聞いた。 このようなことはスキーエリアだけでなく、登山やハイキングなどでもこの先数多く発生するのではないかと思う。まず、対応できる人材が基本的に非常に少ない。英語が話せるガイドも少なく、英語版の地図はないし、ガイドブックも専門的なものはない、のないない尽くしだ。 外国人観光客、つまりインバウンドのアウトドア化はこの先、一気に広がると思う。その対応とサービスが非常に重要だ。スキーも根本から対策を考えねばならない時代に入ったと思う。 ※画像はいずれもイメージで、本文とは無関係です。 (次回へつづく)
■バックナンバー ■筆者紹介 中村 達(なかむら とおる) 京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー 安藤百福センター副センター長、特定非営利活動法人日本ロングトレイル協会代表理事、全国「山の日」運営委員、公益財団法人日本山岳ガイド協会特別委員、国際自然環境アウトドア専門学校顧問など。 生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員 |