- 第485回 -  筆者 中村 達


『ロングトレイルシンポジウム』

 ロングトレイルでつなごうと、長野県小諸市の安藤百福センターでシンポジウムが開催された。全国各地からロングトレイルの運営者や管理者、自治体、観光事業者や教育関係者、それに登山やアウトドア関係者など百数十名の参加者が集まった。募集開始からわずか10日ほどで募集定員を超えてしまい、急きょ参加者枠を増やした。それだけ、ロングトレイルへの関心や期待度が高いということだろう。

 主催者や名誉会長の挨拶からはじまり、文科省からの児童生徒の野外活動でトレイルを歩かせる必要性の講演などがあった。
 スペインの巡礼街道(サンチャゴ・デ・コンポステーラ)の旅の経験談や、シェルパ斉藤さんの山旅の話など、盛りだくさんだった。各地のトレイル、それも新たに誕生したロングトレイルなどから、その誕生までの経緯や現状、課題などの発表もあった。
 奥津軽の旧トロッコ道などは、紅葉の頃に歩いてみたいと思った。金沢で計画中のトレイルは、若い人たちが中心になって運営していて、未来が頼もしく見えた。
 いまや、すっかり有名になった北根室ランチウェイは、何度歩いても、もう一度訪れたくなる、牧場にトレースされたロングトレイルだ。
 鳥取県の山陰海岸ジオパークトレイルは、ジオパークでの最初のロングトレイルとなり、全国の先駆けとなるはずだ。

 ロングトレイルという言葉が、少しずつ知られるようになってきた。いまは、その意味について考える段階だろう。そもそもロングトレイルと言葉は概念的なものであり、定義はない。ロングといっても、何キロが「長い」定義なのか、少なくとも協会で決めているわけではない。
 ロングトレイルがこの国の隅々にまで張りめぐらされれば、あるいは、その過程で日本のデザインが変化するように思う。少なくともライフデザインに大きなインパクトをもたらすのではと期待している。
 ロングトレイルとは、「道をデザインする」ということだろうか。国内には無限に近い毛細血管のように、既存の道が張り巡らされている。国道、県道、市道、町道、林道、散策路、登山道、ハイキング道、杣道、自然歩道・・・など様々な道がある。これらの道をうまくデザインすることで、人々が歩いてみたいと思うトレイルになる。もちろん、新たに整備しなければない箇所も出てくるだろう。
 いいデザインが施された長い道、つまりロングトレイルには内外から多くの人々が訪れると思う。70%が山岳丘陵地帯の地形は、世界でもトップクラスの森林王国で、その中に長い時間をかけて、延々と道がつくられてきた。
 パックを担いだ外国からのハイカーが、ロングトレイルを歩いてくれれば、この国も少しは品格が上がるのではと思う。

特定非営利活動法人日本ロングトレイル協会 http://longtrail.jp/

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
京都生まれ。アウトドアジャーナリスト・プロデューサー
安藤百福センター副センター長、特定非営利活動法人日本ロングトレイル協会代表理事、全国「山の日」運営委員、公益財団法人日本山岳ガイド協会特別委員、国際自然環境アウトドア専門学校顧問など。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルム、ネパール、ニュージランド、ヨーロッパアルプスなど海外登山・ハイキング多数。日本山岳会会員