- 第463回 -  筆者 中村 達


『正確なアウトドアデーターがほしい』

 国内ではアウトドアズが活況だ。10年ほど前は若者の自然離れが深刻で、山は中高年者に占領されたと揶揄するむきもあったが、状況が変わってきた。
 山ガールの登場がきっかけの一つだろう。数少ない統計でも、アウトドアズの伸長が目立つ。スポーツの業界紙は少し前まで、アウトドアズに関する記事は少なかった。野球、ゴルフ、陸上競技などが主役で、アウトドアズはわき役的な存在だった。
 それが、ここ5年間あらゆるスポーツの中で、市場が伸び続けているのはアウトドアズだけだ。ちなみに今期の予想では、メーカー出荷額はおよそ1800億円と推計されている。これはゴルフとスポーツシューズに次ぐ規模だ。小売市場ではほぼこの2倍に相当するから、3500億円と推測できる。ここにきてスポーツ業界が熱い視線を送っている。
 一方、この数字には、ファストファッションやアパレルメーカーなどの機能素材が使われた衣類は含まれていない。発熱素材の下着やダウンなどは、安価なファストファッションメーカーのものが登山などでも、非常に多く使われているので、それを入れると市場規模はさらに大きくなる。あるアウトドアズの専門店のスタッフが、お客の多くがアウターはアウトドアブランドだが、インナーはファストファッションものを着ていると語っていた。
 私も日常的には愛用しているし、ハイキング程度であれば問題はないと思う。先日も、ネットでレインウェアの新製品が出たというので、試しに購入した。まだ、着る機会がないが、十分な機能を発揮するのではと思う。ただ、アルプスなどの登山では、アウトドアメーカーの製品を着用することが多いが・・・。
 ファストファッションやアパレル業界のアウトドア仕様のものを含めると、国内のアウトドアズ市場は飛躍的に大きくなると想像する。しかし、そのデーターはない。

 国民の自然志向や健康志向も、アウトドアズを押し上げているが、来年からは「山の日」が祝日となるので、アウトドアズへの関心はさらに高まると思う。こんな状況になってきたが、アウトドアズの統計データーがあまりにも少ない。登山人口は1000万人といわれているが、登山の定義が示されておらず、高尾山も登山で、厳冬期の北アルプス登山と同質に扱われているのだ。これでは、しっかりした施策がとれないのではと危惧する。散歩とハイキングでは内容が異なるし、オートキャンピングと登山のキャンピングでは、目的が違うので使う用品は、仕様が違ってくるはずである。
 的確なアウトドアデーター、統計が必要な時代に入ったと思うのだが、いかがだろう。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー
安藤百福センター副センター長、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構代表理事、NPO法人自然体験活動推進協議会理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。