- 第450回 -  筆者 中村 達


『ダウンウェア』

 TVでニュースなどを見ていると、冬はダウンウェアを着ている人が多い。それも大手衣料品メーカーの製品が大変目につく。私もついつい安いので手を出してしまいがちだ。そしていつの間には、数えきれないほどに増えた。
 一昔前は、ダウンといっても安価なものはフェザーの比率が高く、バシバシして肌にチクチクと刺すものがあった。それに羽が飛び出して、テントが羽毛だらけなんていう経験もした。それに高価だった。いまは、5,000円程度でも良質なものが手に入る。

 私のような古い山屋は、ダウンは軽くて温かいが高価というイメージが強くある。断捨離とかで、私も着なくなったもの、古くなったものなどは、思いきって処分するようにしている。パーカー、セーター、シャツ、パンツなども躊躇なく捨てられるようになった。透湿素材のアウトドアウェアも型が古くなった物や、体型に合わなくなったものは、処分している。しかし、なぜかダウンウェアだけは、捨てられないでいる。

 初めて手に入れたダウンウェアは、40年ほど前にカラコルムに出かけるために手に入れたフランス製だった。このブランドはいまでは高級品で、タウンファッションアイテムとしても知られている。
 カラコルム登山から帰国後、マーカーで「KARAKORUM EXPEDITION 1969 」なんて書いたダウンを剣岳に自慢げに着て行った。このダウンは長く愛用していたが、自宅に遊びに来たイギリス人バックパッカーが、ネパールに行くというのでプレゼントした。

 最近ではダウンもコンパクトになったし、山へ行くときはもちろんだが、出張などにもバッグに入れていくことが多くなった。列車内やホテルでも重宝している。着るたびにアウトドアグッズは山から下りてくると実感する。発熱肌着、フリース、パック類、パーカーなど、山やアウトドアユースではじまったものが、日常生活でも多用されるという、私なりの理屈が、ダウンにもあてはまっている。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー
安藤百福センター副センター長、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構代表理事、NPO法人自然体験活動推進協議会理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。