- 第449回 -  筆者 中村 達


『フライフィッシング』

 この時期になると、そろそろ一部の渓流では釣りが解禁になる。ただ、水温が低いので魚たちの動きは鈍く、釣り上げるのは難しい。特にイワナやアマゴは手ごわい。
 アウトドア誌などではフライフィッシングが、よく紹介されている。米国では、キャスティングの優美なスタイルが若い女性に人気があるらしい。英国が本家といわれ、ファッションもトラディショナルだ。20年ほど前だろうか、映画「リーバーランズスルーイット」で、フライ人気が一気に高まったこともあった。
 が、私の経験ではフライをはじめて少なくとも2年間は、釣りにならなかったように思う。格好はいいのだが、フライフィッシングは難しくて、その分奥が深い。
 まずは、キャスティングの練習から始めなければならない。軽い毛鉤を飛ばすには、ロッドを的確に振って、ティーパーになっているラインの重さを、うまく利用する必要がある。毛鉤を目標としたところに、的確に落とさなければならないのだが、簡単そうでこれがかなり難しい。かれこれ30年ほどフライをしているが、いまだにうまくいかないことが多い。ラインやリーダーが枝に絡まったり、毛鉤が木の葉に引っ掛かってティペットが縺れたりと、いらいらすることが頻繁に発生する。まして、国内の狭くて急峻な多くの沢筋では、映画のように優美にロッドをすることは、慣れないと厳しい。それでも一投目がうまくいって、魚がフックしたときの快感は、何モノにも代えがたい。

 冬の禁漁中はイメージだけが膨らんで、頭の中で魚影ばかりが大きくなってしまいがちだ。ともかく、この時期はせっせと毛鉤を巻くのだが、いろいろ取り揃えなければならない。これが楽しみといえば楽しみでもある。
 また、しばらくタイイングしていないと、手順を忘れがちになり、少し凝った毛鉤を作ろうと思うと、かなりの時間を費やすことになる。
それでも自分で作った毛鉤でイワナがヒットする瞬間は、なにものにも代えがたい。

 わたしの仕事場に専用の机まで用意して、タイイングツールもしこたま買い込んだ。ロッドもいつの間にか、増えてしまった。準備だけはばっちりのつもりだが、今年はどれだけの釣果があるのだろうか。どこへ行こうか・・・。毎年、シーズンの初めにはそう思うのだが、時間が、仕事が・・・。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー
安藤百福センター副センター長、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構代表理事、NPO法人自然体験活動推進協議会理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。