- 第438回 -  筆者 中村 達


『デング熱やSFTS』

 デング熱の感染が広がっている。報道によればデング熱ウィルスをもつヒトスジシマ蚊は、もはや代々木公園だけでなく、全国に生息域を増やしている。
また数年前から、マダニが媒介する感染症やSFTS(重症熱性血小板減少症候群  Sever fever with thrombocytopenia syndrome ※国立感染症研究所より)というのが話題になっている。SFTSは致死率が高く、治療薬もないらしい。SFTSをもつマダニは全国に広がっていて、裏庭や草むら、森の中など、どこにでも生息しているといわれる。
 特に、鹿やイノシシなどの増加が、マダニなどの生息を助長しているらしい。

 マダニや蚊などに刺されないためには、アウトドアに行かないほうがいいのだが、そういうわけにはいかない。肌をなるべく露出しないようにしたり、防虫剤を塗ったりと、いろいろな防御策をして出かけるほかない。欧米の多くのハイカーのように、半パンツにTシャツでというわけにはいかなくなったのか。

 近郊のトレイルや登山道では、蚊や虫などに刺されたり、噛まれたりするのは日常茶飯事だった。これまでは、全く気にも留めていなかった。いわゆるヤブ蚊には、当たり前のように刺されていた。

 少し前のことだが、無人島で3日間ほどキャンプをしたことがあった。静かな島で快適そうに思えたが、ダニや蚊などの来襲で全身をやられて、帰宅しても1週間ほど痒みがおさまらなかった。
 また、20歳の頃、カラコルムの山麓でダニや南京虫(カメムシ目トコジラミ科)にやられた。噛まれた箇所を数えてみると、右足だけで40以上もあった。背中や見えない部分もやられているので、おそらく数百か所は噛まれたのではないかと思う。猛烈な痒みで、数週間にわたって気分が悪かった。

これらのお話は、極端な例かもしれないが、アウトドアでは常に刺されたり、噛まれたりするものだ。これからは、渓流釣りにもヤマ蛭の忌避剤だけでなく、防虫剤も必携になるのだろうか。
友人のニュージーランド人が、山は半パンツで歩くのが、気持ちがいい。風を感じて歩きたいからと言っていた。果たして、今もそう思っているのかどうか聞いてみたいと思う。

参考:
国立感染症研究所 http://www.nih.go.jp/niid/ja/sfts/2287-ent/3964-madanitaisaku.html

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー
安藤百福センター副センター長、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構代表理事、NPO法人自然体験活動推進協議会理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。