![]() ![]() ![]() - 第434回 - 筆者 中村 達
『夏休みの思い出』 小学生の頃は夏休みだからと言って、旅行へ出かけた記憶はない。せいぜい大阪の親戚の家に従兄を訪ねて遊びに出かけたことぐらいだ。その時代は、旅行はそれほど一般的ではなかったような気がする。当時、私の自宅は京都市内の中心にあった。正確には中京区だが、西に100mほどで右京区なので、なんとかギリギリで中心部だった。が、ギリギリ中心は中京区から見れば外れで、周囲は田畑があっちこっちに残っていた。そのあぜ道やちょっとした広場で、草野球や鬼ごっこなどをして遊ぶのが楽しみだった。 ![]() 私はほとんどカナヅチ状態なので、岸辺近くで弟と水遊びをしていた。遊びに夢中になって後ずさりした時、急に深みに足をとられ、川の流れの中に引き込まれて沈んだ。弟が「アッ!」と叫んだような気がした、からだを必死になってバタつかせると、何とか水中から顔がでた。対岸の岩の上にいた大人たちが、大声で私の近くにいた父親に知らせてくれるのが見えた。再び水中に沈んで流された。子どもながら、もうだめか、もう死ぬのかと思った。 慌てた父親が飛び込んで私を引き上げた。ほんの一瞬の出来事だったが、いまでも鮮明にストップモーションで記憶している。 この日は水遊びを切り上げて、早々に帰ることになった。渡月橋近くの食堂でかき氷を食べた。父親のエクスキューズだったのかもしれない。帰宅してこのことを母親に話すと、びっくりして父親をひどく叱りつけた。 私の小学生時代、夏休みのもっとも思い出深いお話のひとつである。 (次回へつづく)
■バックナンバー ■筆者紹介 中村 達(なかむら とおる) 1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー 安藤百福センター副センター長、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構代表理事、NPO法人自然体験活動推進協議会理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。 生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。 |