- 第421回 -  筆者 中村 達


『日本のアウトドアマーケット』

 子どもたちの自然体験活動も含めた国内のアウトドアマーケットは、いくらぐらいか。アウトドアアクティビティの参加人口は、登山、ハイキング、ウォーキング、スキー、キャンプ程度しかわからないといっていい。残念ながら詳細なデータは、少なくとも私の知る限りはない。
 例えば、登山といっても定義が示されていないので、近郊の里山ハイキングが登山人口にカウントされたり、トレッキングに分類されることがままある。そんなわけだから、国内の登山人口が1000万人を超えるという、世界でもトップレベルの登山大国になってしまうのだ。ざっくり10人に一人の国民が、登山を行っている超人気のレジャーということになる。しかし、私の周りを見渡してみても、この数字は極めて疑問である。
 欧米のように登山とは基本的に、雪、岩、氷などがミックスし、ザイルなどの登攀用具が必要なものと定義すべきだろう。

 さて市場規模はメーカー出荷額としてはデータがとられている。アウトドアアパレルがおよそ750億円だから小売市場では、1千数百億円。これにおよそ600億円(小売り市場)用品・用具が加わる。しめて約2000億円というのが、アウトドアアクティビティのざっくりとした市場と考えられる。もちろん、サービス、交通、食品、飲食、宿泊などは含まれていない。
 2000億円というとスマートフォンの広告総額や、ソーシャルゲームの市場規模とほぼ同じである。これを大きいとみるか、まだまだ小さな規模と考えるかは、アウトドアズのとらえ方によってかわる。
 一方で子どもたちの自然体験活動分野では、例えば、国公立の野外施設の利用人数は、およそ500万人といわれている。移動費、滞在費なども大きな金額になるはずであるが、アウトドアマーケットとしてはカウントされるに至っていない。

 米国などでは、アウトドアズが大きなマーケットで、雇用人口も全産業の中でトップクラスの位置を占めるだけあって、詳しいデータがとられている。だから動向も非常にわかりやすい。
 よく私のところにアウトドアデータの問い合わせがある。企業、自治体や政府機関、あるいは大学生の卒論の参考にしたいというのもある。しかし、残念ながら推測を述べるにとどまっている。
アウトドアアクティビティの分類と定義が明確になり、より正確になったとき、この国のアウトドアズも人々のライフスタイルのひとつとなって、大きな産業分野に成長しているのではと期待したい。

※画像はイメージです。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー
安藤百福センター副センター長、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構代表理事、NPO法人自然体験活動推進協議会理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。