- 第416回 -  筆者 中村 達


『スノーシュー』

 いまがスノーシューのシーズンだ。かつてはカンジキ(ワカン)だったが、いまはスノーシューが主流になったようだ。国内の山は起伏が多いので、当初はスノーシューは不向きだと思っていたが、急登用なども開発されて使いやすくなった。また、価格もリーズナブルになってきた。

 私がはじめてスノーシューを履いたのは、20年ほど前のことだ。米国ニューハンプシャー州の山を登りに出かけたときだった。同行してくれた山岳ガイドが、開発中のスノーシューのテストをするので、私にも使用感を聞かしてほしいというので初めて使った。
 季節は春だったが残雪が1メートル近くあって、山はまだ冬の様相だった。歩きはじめてすぐにスノーシューをつけた。確かに雪の中に沈むことはなく、歩くのは楽だった。ただ、テスト用のスノーシューはプレートがプラスチックで、靴が左右に滑りやすく、傾斜のある斜面では何度もひっくり返った。テント泊だったので荷物もそれなりに重かった。そのうえアウトドアショップでレンタルしたプラスチックブーツが足に馴染まなくて、起き上がるのが大変だった。汗が噴き出した。ガイドはそんなことにお構いなく、どんどん先に登っていった。残雪の上にはブラックベアのま新しい足跡があった。
 その後、何年か経って再びスノーシューを履く機会があった。スノーシューにはいい印象をもっていなかったが、使ってみると非常に快適だった。グリップ力も問題はなく、優れた浮力には驚いた。
 いま、スノーシューには用途に応じて様々な種類が用意され、目的によって選択することができる。レンタルも完備されているので、ぜひ試してみてはいかがだろう。雪上での行動範囲がうーんと広くなるのは請け合いである。

(次回へつづく)


■バックナンバー

■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー
安藤百福センター副センター長、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構代表理事、NPO法人自然体験活動推進協議会理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。