- 第415回 -  筆者 中村 達


『今シーズンのスキー』

 今シーズンはスキーヤーが少し戻ってきたようだ、とニュースは伝えている。スキー場はいろいろなサービスをして、ゲレンデにお客を呼び込もうと努力をしている。スキーはスノボも含めて、参加人口は激減の一途を辿ってきた。大変なのはスキー場だけではない。スキーの関連産業全体が不振で低迷してきた。用具メーカー、流通、交通機関、宿泊業、観光事業者などすそ野産業は広い。スキーを取り扱う小売店も減って、ワックスを買うのにも苦労する。スキーファッションという言葉も、すっかり使われなくなってしまった感がある。板をキャリーにセットして走る車も見かけなくなった。スキーバスはどうなっているのだろうか。

 とはいえ、景気が上向きなのでゲレンデに、スキーヤーやボーダーが少し戻ってきたようだ。余裕のできた中高年者やファミリーが、お正月にスキーを楽しむ姿が見られた。また、外国の観光客をスキー場に誘致しようとする動きもある。特に東南アジアの人々は、雪に触れる機会が少ないので人気が出るのではと期待されている。この先、高齢化と少子化で人口減は避けられず、外国人のスキー需要にも頼らねばならない。
 国内のスキー場は、インフラは相当進んでいる。バブル時代の最盛期に比べればサービスは随分良くなった。あるスキー場の駐車場で係りの若者が「こんにちは!」、と挨拶してくれたのには驚いた。レストハウスで食事をとったあと、リンゴのサービスがあった。翌日、同じレストハウスに行くと、昨日来てくれたので今日は割引しておきますと、1割値引きをしてくれた。
 子ども達が安心して遊べる「雪の広場」も増え、託児所のあるスキー場も多くなった。リフト券もシニア割引は当たり前として、様々なサービスが付加されているようだ。

 長い低迷期から本当に脱するのかどうかまだわからないが、少なくともスキーヤーやボーダーにとって、楽しめる環境は随分良くなった。スキーは何といってもウィンタースポーツの華だろう。これほど楽しいアクティビティはないと、私は思っている。冬の自然を体感でき、人類が自分の力だけで簡単に自己最速を体験できるのだ。
 ただ、あと数週間でソチ冬季オリンピックが開幕するというのに、アルペン競技の映像がほとんど流れないのは寂しい。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー
安藤百福センター副センター長、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構代表理事、NPO法人自然体験活動推進協議会理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。