- 第410回 -  筆者 中村 達


『ストーブのこと』

 再び白川郷に出かけてきた。当地でCONEフォーラムが開催されて、全国から多くの自然体験活動やアウトドアズ、そして観光事業者が集まった。私たちは合掌民家に泊めていただいた。民宿の部屋にはファンヒーターが焚かれていた。
 茅葺屋根は火が付くと壊滅的な被害を受ける。火の扱いには入念な注意が必要だと、村の関係者が語っていた。ちょうど期間中に消防訓練があった。あいにくの降雨の中、合掌家屋の屋根に一斉放水された。白川郷の初冬の風物詩で、観光的にも名物になっているらしい。

 帰宅して自宅が寒いのに気が付いた。一気に冬が訪れたようだ。物置からストーブを出した。私の家ではファンヒーターも使うが、個人的には焔が見えるのが好みだ。そのため、英国生まれの円筒型のストーブを愛用している。メンテナンスさえしっかりやれば、寿命は長い。このストーブ1台で20畳ほどの部屋も十分温まる。青い焔がいい。

 私の仕事場は、昨シーズンまで国産の小型円筒形の石油ストーブを使っていた。かれこれ30年以上愛用していたと思う。オレンジ色の焔が幾重にも重なって、きれいなストーブだった。野外に持ち出せばランプ代わりにもなった。しかし、替え芯の生産が中止になったので、ついに使うのをあきらめた。ホームセンターなどで代替品がないか探してみたが、見つからなかった。メーカーにも尋ねてみたが、在庫はすでになくなっていた。これまで、よくぞ大事に使ってくれたと感謝され、ついにあきらめた。
 仕方がなく同じタイプの新型を購入したので、この冬がデビューとなる。どんな焔が見られるのか楽しみである。エアコンやファンヒーター、オイルヒーターも便利ではあるが、焔が見えるとなぜか落ち着く。
 本当なら暖炉や薪ストーブがほしいところだが、いまだ夢の中である。先日、高山で見たバイオマスのストーブなら何とかなるかもしれない。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー
安藤百福センター副センター長、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構代表理事、NPO法人自然体験活動推進協議会理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。