- 第405回 -  筆者 中村 達


『休みの取り方』

 秋になると祝日がたくさんあって、今年は9月から11月の3か月に、日月の連休が4回ある。土曜日も休みとすると、3連休が4回もあることになる。日本は先進国のなかで祝日が、ずば抜けて多いようだ。
 国内ではまだまだ有給休暇はとりづらいので、国民の祝日を増やして、休暇を多くしているといわれている。周囲の目を意識しがちな国民性だから、自分だけ休むというのはむずかしいのかも知れない。長期間は休まないというのも、国民性かもしれない。有給休暇の取得を奨励している職場もあるが、現実には忙しくて無理、なんていう声も耳にする。
 夏のバカンスやクリスマス休暇で、1か月ほどたっぷり休む欧米とは、観光地やリゾート地での過ごし方が、日本人とはまったく違ってくる。
 ヨーロッパ有数の山岳リゾート地で、カフェでコーヒーやビールを飲みながら、何時間も本を読んでいたり、談笑しているのは、たいがいは欧米人だ。ホテルでの朝食時間も8時ごろからゆっくり時間をかけて楽しむ。
 日本人の団体ツアーは、スケジュールが詰まっているのか、朝一番からレストランに並んでいるのをよく見かける。一か所に滞在する時間が短いので、リゾート地に早朝に着いて、その日はロープウェイに乗って山の上まで上がり、景色を見て記念撮影。街に下りてて昼食を食べ、博物館や美術館をまわって、あとは市内観光とショッピング。夕食のあと、再び夜の市内観光と、またショッピング。そのあと、ホテルに帰ってパッキングをして早めに寝る。翌朝早く、バスで次の目的地に出発。なんていうツアーによく出会う。
 短期間にあれもこれもだが、それはそれで楽しく思い出に残り、また行きたくなる。決して否定できるものではない。休みはたくさんあるが、一回の休日が短いと、どうしてもツアーなどは、スケジュールに追われてしまいがちだ。

 ずいぶん昔のお話だが、山でのんびりしようということになった。いつの間にか、人数が増えて、20名近くになった。高原に着いて1日目は、近くの山に登った。翌日は何もしないで、ぼーっとする計画だった。1日目が終わり、みんなで近くの露天風呂に出かけた。
湯船につかっていると、一人が「明日の計画は?」なんて尋ねてきた。「明日は何もしないで、ぼーっとするだけ」と答えると「めったに来れないところなので、観光しようとみんなで話し合った」と言う。「エっ!」と思ったが、みんながそうしたいのならと、山を下りて麓の町の観光をすることにになった。何もしないのんびり山歩きが、観光ツアーになってしまった。
 のんびりとか、ゆっくりとか、ぼっーっと過ごすなどというのは、それなりの習慣と慣れが必要なのだと、そのときはじめてわかった。

(次回へつづく)


■バックナンバー

■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー
安藤百福センター副センター長、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構代表理事、NPO法人自然体験活動推進協議会理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。