- 第386回 -  筆者 中村 達


『悩ましい春のアウトドアズ』

 ようやく暖かい日も多くなって、春らしくなってきた。今月の末には各地で桜も咲き始め、春本番になる。寒いと実感できないが、確実に春はやってくる。暖かさに誘われてアウトドアに出かけたくなる。里山や低山なら雪も融けて、快適なハイキングが楽しめる。

 しかし、今年はどうだろう。例年の花粉や黄砂だけでなく、PM2.5というのも登場した。超微粒子なので普通のマスクでは防ぎようがない。さらにマダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群にも注意する必要があるようだ。
 海を越えてやってくる大気汚染は、山であろうと森であろうと、お構いなしである。昨年までは花粉症の人も、マスクでなんとか我慢していたようだが、PM2.5が加わると重症化する恐れもあるといわれるので、困ったことである。高密度のマスクをして山を歩くとなると、息苦しいに違いない。どうしたものかとアウトドア好き、ハイキング・トレッキングフリークには頭の痛い難問である。とりあえずは、天気予報をしっかりチェックするしかない。偏西風によって運ばれてきそうな日には、取りやめたほうがよさそうだ。

 一方、マダニ対策である。例年なら春休みに入ると、郊外のキャンプ場はにぎわう。草原ならまだしも、国内のキャンプ場はほとんどが樹林帯にあって、周囲は藪や雑草などが生い茂っているところが多い。当然、マダニなどの生息地域でもある。私もキャンプ場や渓流、沢筋、森、登山道などでダニに咬まれた経験は多い。咬まれても、せいぜいかゆみ止めを塗る程度だった。が、これからは咬まれないよう、注意が必要になる。特に子どもたちには細心の注意を払わねばならなくなった。

 もちろん、むやみに恐れることはないし、アウトドアに出かけるのを取りやめることもないだろう。なるべく、ダニがいそうなところは避ける。咬まれないように、長袖、長ズボンなど、肌の露出を極力減らす。そんな配慮が、これまで以上に必要になったのは確かである。
 とは言うものの、中高年のオジサン・オバサンたちは、ダニや大気汚染を一向に気にする風はなく、いつもどおり元気に歩くのではと想像する。もちろん、山ガールや山ボーイも。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー
安藤百福センター副センター長、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構代表理事、NPO法人自然体験活動推進協議会理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。