- 第374回 -  筆者 中村 達


『放談会』

 信州発アウトドアフェスタというイベントがあった。その中に放談会というのがあって出演させてもらった。メンバーは元オリンピック選手の荻原健司さん、登山家でBSTVの山ガール講座でお馴染みの橋谷晃さん、それに私の3名。荻原さんは、スキーを追及していたらオリンピック選手になった。なんて簡単にいうところがしぶい。橋谷さんは、自分の生い立ちから山に目覚めたことを話してくれた。
 こういうプロフェッショナルは、話がうまいし聴衆を引き付ける。

 わたしはいまのアウトドアズのブームの問題点と課題。なかでも米国のアウトドアズの特徴といったことを中心に放談をさせてもらった。
 まず、いまこの国は戦後最大のアウトドアブレイクであること。データにはやや疑問もあるが、参加人数はかつてなく大きい。しかし、このコラムで何度も指摘している通り、どうもこの国はアウトドアファッションが先行しているようだ。アウトドアファッション誌も本家のアウトドア誌より点数がはるかに多そうである。そしてアウトドアズの人気が高まるにしたがって、方向がタウンに向かってきたように思えてならないのだ。

 その点、米国のアウトドアズは国家規模で産業として、しっかり把握されている。驚くのが雇用だろう。全米で610万人とされる人々が、アウトドアレクレーションで働いている。この労働人口は、ファイナンス・インシュアランス、建築といった大きな産業よりも大きい。現在、米国の経済は厳しい環境にあるが、だからこそアウトドア業界がリードするのだという気概がうかがえる。
 なんやかんやと言っても、やはり米国のアウトドアズは世界をリードしているのは、確かなのだ。残念ながら大きくなったとはいえ、日本のそれはまだまだ及ばない。

 こんなことが私の放談の主な内容だが、実はこの日の聴衆は普段とは少し異なり、自然体験業界の人たちが多かった。すこし、補足がいる。わたしのお話は、どちらかというとアウトドアズといっても、山に偏りぎみでキャンプ屋さんにはさほど話した経験がない。だからこの話も、案外新鮮に聞いてもらえたようだ。
 放談だからすこしいい加減だったようにも思うのだが、終わってから多く人たちから質問をうけたのも、少し驚いた。
 業界といっても開発途上であり、キャンプからヒマラヤ登山まで幅広い。やるべきことが多いのに改めて考えさせられた、秋の一夜だった。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー
安藤百福センター副センター長、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構代表理事、NPO法人自然体験活動推進協議会理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。