- 第350回 -  筆者 中村 達


『雪山モニターツアーを体験』

 観光庁の支援事業のモニターツアーが、滋賀県の高島トレイルで行われた。簡単にいえば、スポーツと観光とをコラボして、地域観光の活性化に役立てようという試みだ。
 プログラムとしてネイチャースキーの体験、地元の食材をつかった料理、それに原生林のスノーシュートレッキングなどが用意されていた。観光庁の支援事業なので、1泊4食付、ガイド付き、現地での移動費などを含んで10,000円と格安だった。すぐに申し込んだ。

 ネイチャースキーは久しぶりだった。数年まえに厳冬の然別湖を歩いて以来だった。ネイチャースキーとは、いわゆる歩くスキーのことだ。私は足が大きいので、いつも靴探しには苦労してきた。最近では登山靴やアウトドアブーツはサイズも豊富になったが、ネイチャースキーのブーツは、10数年前にボストン郊外の登山専門店で買い求めた。ビンディングも一緒に買って、国内で取り付けてもらった。
 アルペンスキーはそれなりに長いキャリアがあって、いまでも年に2週間ほどは滑っている。しかし、ネイチャースキーの経験はほとんどない。
 午前中に雪に覆われたグラウンドで講習があって、午後からフィールドへ出かけた。が、歩くスキーだといって舐めてはいけない。下り坂になると、転ぶ、転倒する、ひっくり返る、ずり落ちる、の連続で立ち上がるのに一苦労だった。エッジがないのと、ブーツが柔らかいので、踵に乗ると簡単にこけてしまうのだ。アルペンスキーの感覚で滑ろうものなら、見事に転倒する。もちろんこれは言い訳。

 3時間ほど林道を歩いて、終盤になる頃ようやく転倒せずに、なんとか滑れるようになった。ともかくひどい目にあった。よくよく考えてみれば、北海道での経験はほとんどが平地で、歩くだけで事足りて、それだけで十分楽しかった。もう、ネイチャースキーはいいかと思った。
 昼にたっぷり食べた、シシ肉、鹿肉、牛肉、鶏肉のバーベキューだったが、ネイチャースキーの予期せぬアルバイトのおかげで、夕食の鯖三昧と郷土料理のバイキングも、すっかり平らげてしまった。

 2日目は、吹雪の中スノーシュートレッキングに出かけた。案内は高島トレイル運営協議会所属の山岳ガイド。2メートルの積雪の上に新雪が30センチほど積もった、原生林の山々は、すばらしいスノーシューのフィールドを提供してくれた。この時期にしては、厳しい冷え込みだったが、30名の参加者は雪山を十分堪能したのではないかと思う。
 スノーシューは雪山での行動範囲を大きく広げてくれる、快適なツールだ。ただ、便利なツールではあるが、雪山の難しさ、危険性はいまも昔も変わらない。高島では、スノーシューの教室やイベントを数多く開催(http://www.takashima-trail.jp/)している。特に積雪期登山の未経験者は、ぜひ講習をうけてからフィールドに入ることをおすすめしたい。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー
安藤百福センター副センター長、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構代表理事、NPO法人自然体験活動推進協議会理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。