![]() ![]() ![]() - 第347回 - 筆者 中村 達
『夢は口に出して・・・』 トム・ソーヤースクール企画コンテストの表彰式の講演会で、登山家の栗城史多さんのお話を聞いた。その中で、「夢は声を出して言わなければ」というフレーズがあった。声を出すことでチャンスが生まれてくるというのが、氏の言だった。その通りだと思った。簡単なようだけれど、それがなかなか難しい。 今から40年も昔のことだ。私はどうしてもカラコルムに行きたかった。カラコルムが何たるかは、実のところさほど知らなかったように思う。ただ、そこはまだまだ未知の領域で、未踏の山々もたくさんあった。当時、ヒマラヤへ足を運んだ日本人では最少年の部類に入ったと思う。 学生だったので、当然お金はない。無一文だった。1ドルが360円の時代で、持ち出し可能な外貨が500ドル。高度経済成長化の日本であっても、まだまだ外国に出かけるのは大変だった。 どうしたか。まず、声に出してみた。「カラコルムに行く!行きたい!」親にも、兄弟にも、親戚にも、もちろん山仲間にも。学校の先生にも。あらゆる人に「カラコルムに行く!」と言って、自分を追い込んでいった。言い続けることで、何となく周囲の理解が得られはじめ、まず、母親が陥落し、父親も「しょうがない」と、虎の子のどこかの株を売って、資金を出してくれた。母親がもっとも理解があった。隊員一人当たりの負担金は、当時のお金で100万円だった。生前分与のような気がした。 ![]() やりたいこと、チャレンジしてみたい夢は、言葉に出さないと実現しない、とこのとき学習したような気がする。 ただ、この私の手法は初回だけの1回限りで、2回目となるとそうは行かない。もう、周囲はその手には乗ってくれなかった。以降は、働いて資金を稼いだり、スポンサーの獲得に奔走したものだった。 トム・ソーヤースクール企画コンテストの表彰式で、安藤理事長が「日本は活力を取り戻さなければいけないと思います。私はハングリースピリッツと言っていますが、自然体験活動では自活力が育まれます。」という趣旨の挨拶をされた。夢の実現にもハングリー精神と自活力が必要だと思う。 (次回へつづく)
■バックナンバー ■筆者紹介 中村 達(なかむら とおる) 1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー 安藤百福センター副センター長、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構代表理事、NPO法人自然体験活動推進協議会理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。 生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。 |