− 第344回 −  筆者 中村 達


『今年最初のアウトドアあれこれ』

 この年末年始のスキー場は、例年よりさらにスキーヤーやボーダーが減少したそうだ。
特に、オーストラリアなどからの外国人が、大きく落ち込んだ。外国人頼みだったスキー場には厳しいお正月だったようだ。原発事故の影響は当面続くのだろう。

 今年も年賀状をたくさんいただいたが、スキーという言葉が書かれたものは、数枚しかなかった。中高年齢者が多いので当然といえば、当然かもしれないが、それにしても例年より少なかった。周りを見渡してもスキーのスの字もない。TVや新聞でも、ほとんど報道されなくなった。

 私の20歳代の頃は、正月といえば冬山かスキーだった。両方やりたいときもあって、年末は志賀高原でスキーをして、大晦日は大町駅でスリーピングパックで寝て、翌朝から鹿島槍が岳に急いで登り、駆けるように下山して、再び志賀高原でスキーなんてこともあった。
 また、冬山に登るにはスキーがうまくなければならないと、栂の森でテントを張って練習したこともあった。スキーはテント泊がほとんどだった。安くあがるし、テントの方が落ち着いた。濡れた衣類は、ゲレンデにある食堂のストーブで乾かした。

 当時、スキー場はどこも大混雑だった。ゴンドラやリフトなどの設備は、まだまだお粗末で輸送力も小さかった。人気のあるスキー場では、1時間待ちなんてことも日常茶飯事だった。オイルショックなどによる経済の浮き沈みはあったものの、マクロ的には右上がり成長を誰も疑わなかった。毎年昇給するし、ボーナスも額はともかく、確実にアップしていた。だから、当時としては高額のスキー道具も、毎年のように買い換えた。
 間違いなく所得が増えるという楽観的な期待があったので、少々無理をしてでもほしい登山やスキー用具を手に入れた。「エイゃ!」と買ったスイスメイドのスキーは12万円もした。もっとも、そのスキーに見合うだけの技術はなかったが・・・。

 いま、若者たちのスキー離れが久しいが、20歳代の彼らの半数は、非正規労働者で年収も200万円以下が大半だといわれる。パートやアルバイトでは、月収はせいぜい10数万円だろう。これでは、生活するのが精一杯で、とてもスキーやボードができるような経済環境ではない。
 リフト代が安くなったとはいえ、1日券は最低でも3,000円はする。スキーやブーツのレンタル、昼食代、交通費などを入れると、日帰りでも1万円はかかる。1泊でもすれば、軽く3万円は越えてしまうだろう。これでは、彼らがスキー場に足を運ぶことはできない。それに、スキーでもスノボーでもすぐにうまくはならない。そこそこ、滑れるまでには、際限なく転倒を繰り返す。格好も良くないし、恥かしい思いもする。

 こんな事情では、とてもスキー人口が増える状況ではない。さらにスキーやスノボーの人口は減少していくだろう。
 レジャー白書ではスキー、スノボーの人口はあわせて1,000万人としているが、10人に一人が楽しんでいるという実感を、とてもじゃないが感じることはできない。
 結局、例外もあるもののスキーやスノボーは、競技指向の人たち、一部の富裕層、余裕のある中高年、そして、少しのファミリーなどに集約されていくように思う。

 一方で、比較的お金のかからない、アウトドアズは今年も人気が高くなると予想する。山ガールのブームは下火とも言われるが、それなりに定着していくだろう。
 震災の影響もあって、ライフスタイルの見直しをしようという生活者も増えつつある。健康志向や自然環境の関心もいっそう高まり、アウトドアライフが生活の中に少しずつ入ってくる予感がある。
 レジャーとしては、厳しい登山より、歩く旅のような自然を楽しむ人たちが増えてくるのではないか。ニュージーランドのガイドが、この国ではアウトドアズがポピュラーだ。何しろ安上がりで楽しいと言っていた。

 米国のアウトドア誌の編集長が、不況になるとアウトドアズは、さらにストロングになると、私に語ったことがあった。
 米国では「Human Powered Activity」が、アウトドアズと定義されている。だからスキーもスノボーもバックカントリーだけが、そのカテゴリーに入る。結局は人力だけで、環境にさほど負苛をかけないアクティビティが、これからのトレンドになるのだろう。もちろん財布にもやさしい。

(次回へつづく)


■バックナンバー

■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー
安藤百福センター副センター長、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構代表理事、NPO法人自然体験活動推進協議会理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。