![]() ![]() ![]() − 第339回 − 筆者 中村 達
『テント泊が増えている』 最近、テント泊の登山者が急増しているらしい。北アルプスの涸沢では、この秋の紅葉シーズンの多い日には、800張り以上のテントが立ったと聞いた。 つい先日、安藤百福センターで行われた「アウトドアフォーラム2011」では、北アルプスの有名山小屋のオーナーが、講演でテントを張る登山者が急激に増え、昨年対比で70%アップだと説明して、会場はどよめきがおこった その理由は、山ガールの増加があげられる。山ガールは30歳代の女性が中心で、彼女たちはしっかりしたライフスタイルを持っていると言われる。これらの女性たちの中には、寝場所は自分で確保したいというニーズがある。 山小屋では共有スペースが多いので、自分の自由空間を確保することはやっかいだ。プライベートな空間を確保するのは難しい。食事の時間は決まっているし、早寝早起きは常識で、夜の9時は就寝時間である。 しかし、一方でテントは雨風や寒さに弱いし、それなりの対策が必要だ。高所や気象条件の厳しいところでテントを張るとなれば、トレーニングや経験がいる。その点、山小屋はテントに比べて、はるかにアドバンテージは高い。 ただ、彼らはこれまでのテント泊登山者とは、ライフスタイルが違う。食事は山小屋で摂る、という人たちが多いのだそうだ。テント客は朝から山小屋へケーキを食べに来る。コーヒーを飲みにくる。朝からビールを生ジョッキで飲む人たちもたくさんいて、先の山小屋のオーナーは、彼女たちの行動パターンに驚いていると言う。 涸沢でも食事は山小屋で、という登山者が多いと聞いた。食料や燃料は嵩張るし重い。テントとスリーピングバックだけなら、何とか担げるし、パッキングも簡単だ。 中高年登山者もテント泊が増加傾向だが、食事は山小屋でという人たちが目立つ。山を楽しむ方法としては、合理的かもしれない。選択肢や方法が増えるというのは、いいことだと思う。 私が山岳部の現役のころは、山小屋に泊まったことなどなく、山行はすべてテント泊だった。山小屋に立ち寄ったのは、公衆電話を使うためだけだった。夕食は遅くとも18時で、21時には寝ていた。食当は3時ごろに起き、他の者は4時起床。そして6時には次の目的地に向けて出発していた。テントは家型とか屋根型とか呼ばれるもので、奥から上級生から順に、交互に寝ることになっていた。もちろん、プレイベートなんていうものはなかったし、そんなことを考えだにしなかったと思う。そんな風だったから、山関係の部活動が低迷してしまったのかも知れない。 先日、滋賀県北部にあるキャンプ場で、ガールズキャンプなるイベントが開催された。女子だけの、初心者向けキャンプ教室だ。男子立ち入り禁止である。これが大盛況で、早々と受付を締め切ったそうだ。自立した女子はテントを担いで山で寝る。そんなトレンドなのか。 私も久しく山でテントを張っていない。テントで寝てみたい心境に少しなった。 (次回へつづく)
■バックナンバー ■筆者紹介 中村 達(なかむら とおる) 1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー 安藤百福センター副センター長、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構代表理事、NPO法人自然体験活動推進協議会理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。 生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。 |