- 第331回 -  筆者 中村 達


『アサマスタークロスウォーク』

 8月20日、アサマスタークロスウォークというイベントが開催された。今年で7回目のである。主催はNPO法人浅間山麓国際自然学校で、小諸市や関係団体が協力して運営している。ルートは標高700mの懐古園をスタートして、浅間山麓の車坂峠の2000mに登り、その後、群馬県の嬬恋村までの約31kmを、夜を徹して歩き通す。私も一度、嬬恋村からのコースを歩いたことがあるが、標高差1300mは結構キツかった。

 この日、あいにくの雨だったが、722名の参加者があった。申込者は837名だったと聞いているが、悪天の割にはキャンセルが少なかったように思う。7年前の初回のとき、参加者はたったの150名だった。関係者の一人として、情けない想いだった。それが昨年は650名のエントリーとなり、今年は800名を大きく上回った。1000人を超えるのは時間の問題だろう。このイベントは、回を重ねるごとに成長してきた感がある。
 雨足が早くなる中、スタートのピストルが鳴った。先頭集団は明らかにトレランやマラソン、あるいはトライアスロンなどの愛好者に見えた。途中の救護ポイントで見ていると、彼らは急な坂を走って登って行った。中には上半身裸の参加者もいて、少し驚いた。気温は10度以下に下がっていたことだろう。
 参加者の多くは、いわゆるトレッキングやハイキングのスタイルだ。かなりしっかりしたスタイルの参加者が増えている。子どもたちも、大勢参加していた。親子連れの参加者も多くなった。

 しかし、よく見ていると、とても標高2000mに登るスタイルではない参加者も散見された。夜に雨の中を登るのにしては、レインウェアがややお粗末に見えた。通気性のない透明のビニールのカッパや、カジュアルなジャンパー姿もあった。これは、観光地の上高地や立山室堂などでも、雨に日にはよく見られる光景と同じだ。
 また、2000mの車坂峠にある中間ポイント(ファミリーコースのゴール)では、休んでいる参加者が大勢おられたが、中には綿のようなTシャツ姿も見受けられた。夏でもこんな悪天の日には、低体温症になる可能性だってある。主催者は持ち物や服装に関して、きめの細かいアドバイスが必要だろう。アウトドアウェアは日々進化している。こういうイベントと時こそ、リスクマネージメントを参加者に伝えるチャンスでもある。関係者の一人として反省しきりである。

 ともあれ、事故もなく無事に終了し、参加賞である嬬恋村産のキャベツをお土産に、まだ夜も明けない中、参加者は帰路についた。

(次回へつづく)


■バックナンバー

■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー
安藤百福センター副センター長、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構代表理事、NPO法人自然体験活動推進協議会理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。