![]() ![]() ![]() - 第330回 - 筆者 中村 達
『続々 シャモニのアウトドアズ』 アルプスのリゾート地シャモニは、モンブラン山群の登山基地でもある。世界中からおおぜいの登山者が訪れる。街には観光客目当ての土産店やレストランだけでなく、登山やアウトドアスポーツのショップがたくさんある。 ヨーロッパには登山用具の老舗メーカーが数多くある。ピッケルやアイゼンなど登攀具のシモン、シャルレ、グリーベル、カシン。リュックサックのミレー、ラフマなどがその代表だろう。 大学1年のとき、私が初めて手に入れたピッケルがグリーベルだった。アイゼンはシモン。そして、アルバイトで手にした給料の大半をつぎ込んで買ったのが、ミレーの1本締めの帆布製のリュックだった。グリーベルのピッケルは、山岳部の先輩がカラコルムに出かけるから貸してくれ、と言うので貸したが、そのまま返ってこなかった。ミレーのリュックはまだ手元にあるが、色あせて劣化して、さすがに実用的ではなくなった。 ロックハンマーはカシンだった。シンプルな作りがとても優美だった。これは行方不明だ。これらは1960年代の後半のことで、まだ輸入品が少なかったころのお話しである。 ![]() ![]() ![]() 登山用具店を訪ね歩いているうちに、ピッケルがほしくなってきた。ウィンドウには数多くのピッケルがディスプレイしてある。こんな光景は、国内ではほとんどお目にかかれなくなった。ある程度目星をつけておいて、帰国の前日にその店を訪ねた。 スタッフはお世辞にも愛想がいいとは言えなかったが、ピッケルのことをたずねると、急に笑顔になって饒舌になった。使う季節、目的、フィールド、登山経験など、細かい質問をしてきた。私が山岳スキーでも使えるもの、とリクエストすると、何十本とあるピッケルの中から3本取り出した。この3本がおすすめだそうだ。私が目星をつけておいたものは入っていなかった。結局、購入したのは米国ブランドのピッケルだった。お笑いである。 ![]() 登山では道具や用具の使い方によっては、命を左右することだってある。登山ブームといわれているが、安全に楽しむためには、このあたりの対応や教育も必要だろう。 (次回へつづく)
■バックナンバー ■筆者紹介 中村 達(なかむら とおる) 1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー 安藤百福センター副センター長、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構代表理事、NPO法人自然体験活動推進協議会理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。 生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。 |