- 第327回 -  筆者 中村 達


『ロングトレイル』

 やや我田引水だが、いまロングトレイルが注目されている。トレイルとは山道、登山道、ハイキング道、自然歩道、杣道などがつながり、トレッキングが楽しめるルートのことだ。ピークを目差すのではなく、自然の中を歩くこと自体を楽しむのが、トレイルという考え方だろう。そんなトレイルが数十キロから数百キロと続き、踏破するのに何日も費やさねばならないのがロングトレイルである。
 海外では米国のアパラチアントレイルやジョンミューアトレイル、欧米の巡礼街道など数多くのロングトレイルがある。中には踏破するのに半年以上もかかるトレイルもある。
国内には、四国巡礼の道、熊野古道などが良く知られている。

 注目のロングトレイルは、新たに誕生したもので、地域観光の活性化、自然保護などのコンテンツがしっかり組み込まれ、同時に、インタープリテーションやガイディングのシステムが備わっていることが、共通した特色といえる。
 長野県飯山市の信越トレイル、滋賀県の高島トレイルが先行し、八ケ岳スーパートレイルが後を追うように誕生した。八ケ岳スーパートレイルは、八ケ岳連峰を周遊する国内最長の200kmの距離を誇る。それに北海道一周を目差し、十勝から始まった、とかちロングトレイルや、浅間山麓を回る約170kmの浅間ロングトレイルなどが続いている。

 信越トレイルは年間3万人のトレッカーが訪れている。高島トレイルは京阪神、中京圏から5万人以上がトレッキングを楽しみ、トレイルのもつ経済効果は2億円と推計されている。八ケ岳スーパートレイルは、高校の修学旅行や小中学校の体験学習にも利用され始めた。
 これらのロングトレイルに続いて、霧が峰・美ヶ原中央分水嶺トレイル塩の道トレイル、みなかみスノーカントリートレイルなどの整備が進んでいる。また、東北にもロングトレイルが出来ないかと検討されているようだ。ほかにも多くのロングトレイルの計画を聞いている。

 そこで、これらの全国に広がるトレイルの運営管理者が集まって、情報の共有や、広報、ガイドやインタープリターの研修などを協力して行い、トレイルの普及とガイドライン作りなどを行うことを目的とした、日本ロングトレイル協議会が7月8日に設立された。私も委員の一人として、参画することになった
 日本の森を、里山を、山々を、パックを担いだ国内外の若者たちが、歩いてくれることを願う。子どもたちにも歩いてほしい。そんなトレイルが全国に広がっていけば、この国の未来は明るいと信じている。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー
安藤百福センター副センター長、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構代表理事、NPO法人自然体験活動推進協議会理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。