- 第320回 -  筆者 中村 達


『GWアウトドアの風景』

(北アルプス立山)
 連休の前半、毎年のことだが立山にスキーに出かけてきた。東日本大震災の影響で例年なら外国人観光客、とりわけ東アジアの国々からやってくる人たちで、立山駅や美女平のバスターミナルはごった返しているのだが、今年は日本人ばかりだった。ただ、自粛ムードが懸念されていた割には、幾分観光客が戻ってきたような印象をうけた。

 立山は例年より雪が多く、私たちが入山した日も吹雪だった。GWの少し前までアイスバーンの状態で、その上に新雪が降り続いたので雪崩が心配だった。
 入山者は少なめに感じたが、それでも登山者やスキーヤーが、一の越へ向かう斜面に列をつくっていた。スキーヤーを観察してみると、大半が山岳スキー用のビィンディングを装着していた。ひと頃の純然たるスキーヤーは、少なくなっているようだ。年齢層は40~50歳台が中心だろう。ボーダーはそれより少し若い。全体的にはやや若返っているように感じた。

 今年は少し意気込んで準備した。ヘルメット、ファットスキー用のアイゼン、登山用のアイゼン、短めのピッケル、40mザイル、ハーネス、スコップ、それにビーコンも装備に入れた。しかし、一の越に登ってみると、風雪でホワイトアウト。翌日も同じ条件。昨年からだと5日連続の悪天である。メンバーに「行くか?」と尋ねたが、一人として首をタテにふらなかった。無理をすれば黒4ダムまで滑れなくはないが、悪天では楽しくはないだろうと諦めた。仕方なく、天狗岳周辺でお茶を濁して早々に下山した。また、来年がある。

(高島トレイル 赤坂山)
 立山から帰ったあと、消化不良もあって山に行きたくなり、湖北の赤坂山を歩いてきた。赤坂山はこの時期、花が咲き乱れることで知られている。
 今年はいつまでも寒いので、野草はまだこれからというところだったが、トクワカソウ、イカリソウ、カタクリなどを見ることができた。タムシバの白い花は満開だった。山頂付近には残雪もあって、トレイルは趣のある風景をつくっていた。それに、予想外にハイカーも少なく、静かでいい山歩きができた。

 麓のキャンプ場では、500張り以上のテントが張られ、子どもたちが芝生の上を走り回っていた。私も子育て期間中は、このキャンプ場にお世話になったものだが、その当時と比べて、テントはさらに巨大化し、快適さが飛躍的に向上しているようだ。ただ、夕食の準備を見ていると、圧倒的にバーベキューが多いのは、昔も今も変わらない。
 休日に子どもたちを連れてキャンプに出かける。キャンプ場の周囲には素晴しい自然がある。バーベキューしかできないオヤジでも、自然に入るとなんだか立派に見える。子どもたちは、きっとそう感じたに違いない。

(浅間山 山開き)
 GWの最終日、浅間山(2,568m)の山開きに出かけてきた。浅間山の平穏と、これからの登山シーズンの安全を祈願するイベントである。600人の参加者を前に、神事と山麓地域の首長の挨拶など、一連のセレモニーが行われた。

 実は、黒斑山や蛇骨岳は何度か登っているが、浅間山は初めてだった。ここ7~8年、小諸市の周辺や高峰高原には幾度となく訪れているが、浅間山に登る機会がなかったのが自分でも不思議だ。
 晴れの登山日和だったが、標高2,000m付近からは強風で体が吹き飛ばされそうだった。かぶっていた帽子が、ストッパーごと50mは飛ばされただろうか。一瞬諦めかけたが、意をけして、礫の滑りやすい斜面をトラバースして拾いに行った。おおぜいの登山者が見ていて、少し恥ずかしい思いをした。
 警戒レベルが1と、浅間山の活動はおさまっているが、登山は前掛山までとされている。それでも入山禁止されている浅間の山頂に、ロープをくぐって登る人たちがいる。よく似た標高なので、どちらに立ってもいいと思うのだが、火口がのぞけるのが魅力らしい。

私たちはゆっくり歩いて4時間ほどで前掛山の山頂に立った。

 この日の登山者は、地元の人たちが大半で、年に1度は登るというのが年中行事なのだそうだ。ただ、2,000m以上の独立峰で、いつも強い風が吹き、歩きにくい火山特有の地質だけに、登山装備はしっかりしたものを用意すべきだと思う。スニーカーで薄着の高齢登山者も散見された。雨にでも降られれば大変だっただろう。
 山ガールたちも参加していた。ただ、登山ウェアとしてはやや薄着の印象だった。もっとも「私たちは軽装なので、登頂はあきらめました」という判断は偉かった。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー
NPO法人自然体験活動推進協議会理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構副代表理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。