- 第316回 -  筆者 中村 達


『震災とスキー場』

 マスメディアではほとんど報じられていないようだが、東北関東大震災で各地のスキー場は、営業中止や縮小、あるいは早期閉鎖など何らかの対応に追われている。長野北部地震の影響もあって、近辺のスキー場ではゴンドラを休止しているところもある。現地に問い合わせてみると、スキーヤーも数えるほどしかいないという。外国人スキーヤーも大半が退去したと聞いた。
スキー場のHPをみると、多くのところで営業縮小、期間縮小、早期終了などのコメントが並んでいる。震災の被害を受けていないところでも、計画停電の影響もあっ て、事実上営業できないスキー場もある。

 スキー場がこのような状況では、ホテル、旅館、ペンションなどの宿泊施設には、キャンセルが相次いでひどい状態になっている。今年は例年より降雪量が多く、退潮気味のスキー場にとっては恵みのシーズンで、ファミリースキーヤーが戻ってきたと喜ぶところもあった。普段なら入り込み客が増える春休みは、開店休業状態に陥ってしまった。
 この春休み、子どもたちのスキー教室、キャンプ教室なども中止が相次いでいる。主催する自然学校などの野外教育団体も大きな打撃を受け、このままの状態が続けば経営が成り立つのか心配する声も出始めている。
 また、スキー場だけでなく、観光地も大変な影響を受けている。特に外国人観光客の誘致をおこなっていた地域は、キャンセル続出で大変だろうと想像する。
 一方、あるスキーショップではすでに2月に昨年シーズンの実績を超えていたものの、震災でパッタと売れ行きは止まった。「スキーはレジャーですから、被災された人たちのことを思えば我慢しなければ」と、知人の店長は語っていた。とはいえ、今年はいつになくスキーやスノボーの売れ行きが堅調であっただけに、ショックは大きい。
 長野県の有名なスキー場をかかえるある自治体の担当課長が「冬だけを当てにするのは、難しくなった。夏にがんばります。」と力強い声が、受話器の向こうから響いてきた。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー
NPO法人自然体験活動推進協議会理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構副代表理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。