- 第310回 -  筆者 中村 達


『スキーヘルメット』

 1月の中旬、今シーズン購入したファットスキーを試してみようと、信州のスキー場に出かけた。年末からの降雪で、ほとんどのスキー場は滑走可能で、今年は雪の心配がなさそうだ。
 出かけたスキー場は休日とあって、大勢のスキーヤーやボーダーが訪れていた。中でも子ども連れのファミリースキーヤーが目についた。子どもたちの笑顔があふれていた。
 今シーズンから子どものリフト券が無料になったそうで、休日ともなると家族連れが多くなった。やはり潜在需要はあるということだ。レストランで様子を見ていると、お弁当持参が目に付いたが、ジュースを飲んだり、ソフトクリームなどを食べているファミリーも多いので、リフト代はタダでも何がしかの消費はする。もちろん親たちはリフト券を購入することとなる。
 やや遅きに失した感はあるが、この種のサービスはやらないよりやったほうがいい。

 ところで、私もファットスキーと一緒にヘルメットを買い求めた。かつてスキー用のヘルメットといえば競技専用だったが、いまでは安全のために一般スキーヤーの着用がすすんでいる。ヘルメットをかぶってみて、心理的にもなんとなく安心で、それに頭が温かい。
 もっと早く買っておけばよかったのにと、やや後悔である。
 気をつけて様子を見ていると、どうやら上級者ほど着用率が高いようだ。昨年末に出かけた別のスキー場では、ほとんどのスキーヤーがヘルメットをかぶっていた。このスキー場は競技選手や指導者が多いことで知られている。一方で、子どもたちの着用率もあがってきたようだ。
 人力で最高速が出せる大衆スポーツといえば、スキーやスノボーだろう。だれでも軽く数十キロは出せるので、怪我はつきものだ。スキーヤー同士の衝突事故も多い。わたしも何度かぶつかった経験がある。

 スキー人口が激減するとともに、スキー場のサービスが向上し、ヘルメットの着用率が上昇するというのは、なんとも皮肉である。ちなみに年始年末のスキー場の入り込み客は、昨年対比で平均15%程度のダウンだと聞いた。まだまだ厳しい状況が続いているといえそうだ。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー
NPO法人自然体験活動推進協議会理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構副代表理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。