- 第308回 -  筆者 中村 達


『今年のアウトドアズと自然体験』

 この正月、公園にも広場にも子どもたちの姿を見かけることがなかった。初詣の神社でも子どもたちがいつもより少ないような気がした。家の中でゲームに夢中なのだろうか。一昔前であれば、公園や路地で正月遊びの子どもたちが大勢いてにぎやかだった。
 ワイオミング州にあるティートンサイエンススクールの校長が、米国でも子どもの自然体験が減少していると語っていた。原因はゲームと親のアウトドア経験のなさと指摘していた。

 自然体験活動の必要性については誰もが認めているところだが、ニーズを掘り起こす作業が必要だ。この作業が遅れているように思う。団塊の世代のリタイアメントが始まっているので、彼らの社会参加の方法のひとつとして、子どもたちに自然体験を指導するようなスキームも必要だろう。今年の年賀状にもボランティア活動を始めた、というコメントが数多くあった。シニア世代が子どもたちの自然体験を指導する、地域のコミュニティ活動が発生すれば面白い展開になる。

 一方で、ことしは山ガールがさらにブレイクし、そのトレンドは他の年齢層にも波及していくことだろう。ファッションが先行ではあるが、自然はともかく気持ちがいいし、開放感があって心身がリフレッシュでき、山頂に立てば達成感がある。これが人気の理由だ。

 国内のアウトドアメーカーやブランドは増産体制で、春先には新しい商品がどどーっと、ショップに並ぶ。登山やアウトドア専門店だけでなく、セレクトショップや衣料品店にも、山ガールファッションとグッズがあふれることだろう。各社とも予想以上の山ガールファッションの売れ行きに驚いているといったところだ。

 すでにオーバーユースとなっている富士登山を奨励するより、この国のアウトドアズのために山ガールが増えることは、それはそれでいいのではないか。ただ、山ガール達の登山経験や技術は初心者が大半だといわれ、この先事故の多発が懸念される。これにはアウトドア業界などが一丸となって、対策を講じる必要がある。スキルアップのための講習会などを各地で開講することも一案だ。安全対策は最優先の課題である。
 もっとも山ガールはファッション指向のブームだけに、それほど長続きはしないのでは、と予想する向きが多いのも確かだ。

 とはいえ山ガール効果は、中高年登山者にも波及してきたようだ。例えば中高年登山者の独特の山ファッションに変化の兆しが見える。オバサンたちも山スカートを着用しはじめた。オジサンたちの山スタイルも少しはカラフルになってきた。このムーブメントがこの先どのような展開を見せるのか、山ガールよりも若い世代に果たして伝播していくのか、しばらく目が離せない。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー
NPO法人自然体験活動推進協議会理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構副代表理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。