- 第281回 -  筆者 中村 達


『スノーシューで体験ウォーク』

 連休明けに八ヶ岳山麓スーパートレイル(http://ystrail.jp/)で、スノーシューによる体験ウォークが開催された。総距離200kmのロングトレイルの僅か10kmほどの雪山ウォークだが、初心者にはしっかりしたガイドやリーダーが必要だ。
 この日はトレイル委員会の認定ガイドの案内で、トレッキングがはじまった。30名余りの参加者はスノーシューをリュックサックにセットして、八子が峰への急な雪道を登り始めた。朝からあいにくの天候で、稜線に出ると雪が舞い、時折強い風が吹きつけた。また、今年は雪が少なくて稜線はトレイルが露出していて、スノーシューを履く必要がなく夏道を歩くことになった。しかし、気温はかなり低い。パーカーの下にフリースを着込んだ。
 スノーシューが履けたのは、八子が峰山頂からの下りになってからだった。スノーシューが初めての参加者も大勢いたようだが、まるで子どものように嬉々として雪の上を歩く姿に、思わず笑みがこぼれた。晴れていれば、富士山や南アルプス、中央アルプスなどもきれいに見えはずなのが、少し心残りだった。

 今年、北陸や東北には大雪が降ったが、八ヶ岳や内陸部はさほど積雪がなかったようだ。体験ウォークの最後はスキー場を下ったが、すでに半分は雪がなく、地肌が露出していた。例年ならまだまだシーズン中というのに、上半分はすでにリフトが止まっていた。これではスキーヤーやボーダーはやってこない。周囲を見渡すと、山には雪がほとんどなく、対面に見える有名スキー場は地面が見え春の気配だ。先日訪れた日本海側のスキー場には2m以上の積雪があったのとは大違いだ。
 今シーズンは不況ということで、昨年よりスキー場の入り込み客は、さらに20~30%も減少したといわれている。それに追い打ちをかけるように、雪不足ではたまったものではない。噂では売りに出されている宿泊施設や、倒産した旅館やホテルもあると聞いた。困ったことだ。
 この地域はバブル時代、首都圏に近いだけあって非常に高い人気があった。土日ともなれば、どのスキー場も満杯で、リフトには長い行列ができ、ラーメン1杯が千円もするレストランがあった。子どもを連れて行ったが、あまりの高さとスキーヤーのド派手なファッションに驚いた記憶がある。もちろん宿はいつも満杯だった。もっとも私はといえば、予算を少しでも安くあげようと、知人の勤める会社の保養所に泊めてもらった。
 スノーシューを履いて雪の少なくなったゲレンデを下降していると、そんな時代のことを思い出した。もちろん、このスキー場に限らず全国には同じようなところがいくらでもある。そんなスキー場がこれからどうなっていくのか、非常に気がかりだ。
 参加者の元気な姿を見ながら、この国はどうなっていくのかと、いつになくネガティブな気分になった。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー
NPO法人自然体験活動推進協議会理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構副代表理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。