− 第276回 −  筆者 中村 達


『キャンピングカーと観光』

 幕張メッセで「CAMPING & RV SHOW2010」というキャンピングカーの展示会が開催された。会場にところ狭しと展示されたキャンピングカーは壮観だった。キャンピングカーといっても、100万円台から1,000万円台までかなりの幅がある。
 買える買えないは、ともかくとして、私たちのようなアウトドア大好き人間にとっては、夢のキャンピングカーである。アウトドアアクティビティのベースキャンプとして、大変便利だと思う。だれにも干渉されない個室で、時間や場所に縛られることとなく、自由気ままな生活が楽しめる。アウトドアでは最良の移動可能な棲家だ。
 そんな憧れのキャンピングカーは、欧米などでは当たり前のように走っているのだが、国内ではまだまだ少ない。昨年は6,000台ほどが売れたそうだが、不振を極める自動車に比べられても、販売台数はごく僅かだ。

 自然志向がトレンドで「旅」は、日本人にとってもっとも行いたい余暇活動である。そんな旅の足として宿として、キャンピングカーは、もっとも便利なはずであるが、実際に保有するにはさまざまなバリアーがある。
 まず、都市部では駐車場の確保が大変だ。日常の足には使いづらいので、乗用車を持っている場合は、もう一台駐車スペースをキープしなければならない。一戸建てで広い庭でもあれば問題ないのだが、大都市部ではそんな人はごく少数だ。
 次に車検がある。キャンピングカーといっても車検から逃れることは出来ない。また、大型であれば大型免許証も必要で、トレーラーハウスなら牽引免許も取得しなければならない。もっとも、山道や林道が多い国内のフィールドでは、大型のものは走りづらいにようにも思える。  そこで、今人気なのが軽のキャンピングカーだ。これだと価格も税金もリーズナブルだ。駐車スペースも小さくて済む。展示会場では、この軽のキャンピングカーが人気を集めていた。

 一方で、この国にはキャンピングカーが使えるキャンプサイトや公共の施設が、ほとんど整備されていない。欧米ではかつての駅馬車が人々の生活を支えていたので、キャンピングカーの認知度は日本に比べてはるかに高い。都市近郊にはキャンプサイトは数多くあるし、トイレ、シャワー、キッチンなどの設備も充実している。日本では道の駅などの片隅で、周囲の目を気にしながら利用しなければならないのが実態だ。
キャンプサイトのインフラ整備など簡単にできるし、観光客の減少に悩む地域などでは検討してもいいのではないかと思う。

 同時に開催されたフォーラムでは、観光庁から訪日外国人3,000万人計画の説明があった。訪日外国人数を2013年までに1,500万人、2016年までに2,000万人、2019年までに2,500万人、そして将来は3,000万人にするというのだ。これが観光立国の政策だ。
人口減少による地域経済の縮小を、観光収入で補おうというのが狙いだそうだ。定住人口1人減少分を、外国人旅行者7人分で補おうという試算もある。ちなみに、昨年は世界的な不況もあって、訪日外国人数は当初の目標を大きく下回り、およそ680万人だった。

 この訪日外国人の増加数は目標ではあるが、訪れる外国人が増えれば、旅行形態は多様化する。これまでのように、「見て、食べて、買って」という観光から、日本の自然や森の文化を求めてくる人たちも、かなりの数に昇るはずだ。TVのニュースなどで、電気街で買い物をする外国人観光客の姿が映し出されているが、日本の奥深く、すばらしい自然を訪ね歩くシーンが報道されることを期待したい。
 訪日外国人が増加すれば、旅の方法も多様化する。バックパックを背負ってトレイルを歩いたり、キャンピングカーで各地を訪ねたいという外国人観光客も、かなりの数にのぼるのではと予想する。そんな多彩なニーズが発生する時代に対応した、インフラや情報の整備が必要になってくる。キャンピングカーで各地を訪ねる外国人が増えれば、この国の観光も、少しは品格が高くなるのではと思う。

(次回へつづく)


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■筆者紹介

中村 達(なかむら とおる)
1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト/プロデューサー
NPO法人自然体験活動推進協議会理事、国際自然環境アウトドア専門学校顧問、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構副代表理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。
生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。