![]() ![]() ![]() - 第263回 - 筆者 中村 達
『アウトドアとデジカメ』 ここ数年でデジカメの機能が飛躍的に向上した。そして安くなった。1,000万画素クラスのコンデジが15,000円も出せば手に入る。5~6年前、400万画素のデジカメが50,000円もしたことを考えると夢のようだ。それに扱い方も随分簡単になった。シャッターを押すだけできれいに撮れ、失敗することも少ない。F値とか、被写界深度などという難解なことを考えずにすむようになった。 一眼レフについては、もっと進化が早い。進化の早い分だけ、劣化もすさましいスピードで進んでいる。5年前に14万円ほどで買った600万画素の一眼レフは、レンズ付きで売りに出しても、せいぜい1万円ほどだ。道具としての価値の下落は目を覆うばかりだ。 これがフィルムカメラだと20年前のものでも、フィルムさえあれば道具として遜色はない。しかし、7年前に20万ほどで買い求めた当時最新鋭のフィルム一眼レフカメラは、オークションに出してもせいぜい3万円だそうだ。フィルムカメラの需要が激減しているので仕方のないことなのだろう。 その結果、私の密かなカメラの資産は、途方もなく目減りして、今後回復することはなく、いずれゴミ扱になるのは間違いなさそうだ。 しかし、デジカメの驚異的な進化によって、だれでも簡単に写真を撮ることができるようになったのは、すばらしいことだと思う。私も仕事上、デジカメはなくてはならない存在となっている。しかし、アウトドアでデジカメを使う場合、常に気をつけておかないといけないのがバッテリーの残量だ。電池がなくなればそこでアウト。ただの箱になってしまう。だから常に予備のバッテリーを用意しておく必要がある。コンデジの場合、ライブビューをせず、ファインダーを覗いて撮影すれば、バッテリーの消費をセーブすることができる。パララックスは慣れれば何とかなるものだ。しかし、最近のコンデジでファインダー付きのものが少なくなってきているのは困ったものだ。メーカーによっては皆無というのも珍しくはない。最近のコンデジは動画機能が付きだし、ズーム比も大きくなったので、バッテリーの消費量はさらに多くなっている。 また、液晶の反射を少なくするように改善されているようだが、コントラストの強い山岳などでは、どうしようもなく見にくい。 アウトドアではバッテリーと液晶が大きな問題である。とくに長期間、山に入る場合などは、バッテリーをいくつ持っていけばいいのか悩むことが多い。 笑い話のようだが、昨年の夏、北アルプスを縦走中、同行者がデジ一で撮影をしようとしたが、シャッターが切れない。バッテリーに充電をしてくるのを忘れたようだ。山小屋で充電器がないかたずねてみたが、もちろんなかった。結局、彼は5日間、ただの重い箱を運ぶだけとなった。これが機械式のフィルム一眼だと、露出計は作動しなくても、シャッターは切れる。 デジカメの普及と進化は、アウトドアでも随分便利になったが、その分余計な作業が増えた。アウトドアズというのは、人間にとって非日常のアナログ的な行為だと考えている。そこにデジカメが入ってくると、思考と行動が常に現実に戻ってしまうような気がする。それでもデジカメの新製品が出ると、気になって仕方がないのは、モノ指向の煩悩そのものだろう。 (次回へつづく)
■バックナンバー ■筆者紹介 中村 達(なかむら とおる) 1949年京都生まれ。アウトドアジャーナリスト。 NPO法人自然体験活動推進協議会理事、国際アウトドア専門学校顧問、NPO法人比良比叡自然学校常務理事、日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事、東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど。 生活に密着したネーチャーライフを提案している。著書に「アウトドアズマーケティングの歩き方」「アウトドアビジネスへの提言」「アウトドアズがライフスタイルになる日」など。『歩く』3部作(東映ビデオ)総監修。カラコルムラットクI、II峰登山隊に参加。日本山岳会会員。 |